恋愛模様
何事も諦めが肝心。
「はぁ……」
「どうしたの?」
俺が溜め息をついていると後ろから急に声をかけられた。
「わっ!……って何だ、母さんか」
「何だとは何よぅー」
ぷぅ、と頬をふくらませる。
その歳でそれをやっても、普通に違和感なく可愛いと思わせる母さんは本当に凄いと思う。
「それで、どうしたの?」
「いや、明日から暫くここともお別れか……と思って」
「なぁんだ、そんな事考えてたの?」
「そんな事って……。だって、全く知らない人しかいないところに行くんだぜ?心配じゃん」
「うふふっ。優ちゃんなら大丈夫よ。それに、理事長は雅紀なんだからワガママ言っても大丈夫。寂しくなったら帰って来なさい」
その時の母さんは、立派な母親だった。
……その時だけだけどな。
「うん……」
「優ちゃんには彼方くんに貰ったバットがあるでしょう?(人を殺す心配がないのなら安心だわ!彼方くんも考えたわね……)」
「うん……。ありがと、母さん」
「私は母親なんですもの。もっと頼ってくれてもいいのよ?」
普段から母さんがこうだったら良いのに。
こんな時ばっか母親ぶって。
まぁ、結局は何だかんだいって、母親なんだけれども。
「あとね、優ちゃん。ママは、同性愛とかに偏見ないから、好きな男の子が出来ても俺は親不孝者だなんて悩まなくてもいいのよ」
ああぁぁぁぁぁぁあ!!
「彼氏が出来たら直ぐ教えてね!」
そう言えばッ!!
すっかり忘れてた!
「やっぱり知ってやがったんだな!!?」
「やだぁ。何のことぉ?」
くっ……この、しらばっくれやがって!!
「月城学園がホモだらけだってことだよッ!!」
「やっだ、優ちゃん知らなかったの?」
「何で俺がそんな事知ってんだよ」
「……ふぅーん。ま、出来れば彼氏は美形の方がママは嬉しいわ!」
こんのクソババァ……!
これを声に出して言えないことが辛い。
これを口にしてしまったら、それこそ俺の人生は終わってしまう。
「雅紀によると、月城は金持ちの息子で美形が多いらしいわ。頑張ってね、優ちゃん」
誰が……。
俺はホモじゃねぇし、男に恋したりしない。
母さんは俺を何だと思っているんだ。まったく……。
「俺、もう寝るね……」
「お休み♪」
はぁ……。
何か一気に疲れた。
明日からやっていけんのかな、俺。
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