受け継いだ物』(小説)
「かけがえのないもの」 2/4
ジョルノが部屋から出ると、ドアの後ろでミスタが待っていた。

「連れてきたぜ。」

「ありがとうございます。」

「どう致しまして。」

「後はポルナレフさんが眠るのを待つだけ…。」

「ふーん…。」

ミスタは先程ジョルノから渡された花びらを見た。

『デス13をお願いします。』

初めて見る人名だった。
ジョルノの友好関係、支配関係は、まだまだミスタにもわからないことばかりだった。

『デス13……か。
これまた、縁起悪い名前だな……。』

4が入ってないだけマシか…
と思いつつ、隣に立っている青年を見た。
アジア系の顔をしたその青年は、つまらなさそうに立っていた。

「お前…名前は?」

「言わなきゃならないのか?」

ミスタが尋ねると、その青年は一瞬顔を歪めた。

「いや…別に…。」

「なら言わない。」

そんな2人の会話を聞いていたジョルノが口を開いた。

「僕も彼の名前は知りません。
でも、彼はこうして来てくれた。それだけで十分です。」

「……………。」

いったい、ジョルノとこの青年は、どういう関係なのだろうか?

いつも突然、ジョルノからは『例の人物を…』と、知らない人物を呼ぶように言われる。

そのたびミスタは、どこに通じているのかわからない電話番号をプッシュし(これもジョルノから教えられる。)、集合をかけるのだ。

前ボス、ディアボロのように姿こそ隠さないものの、ジョルノもまた、謎が多かった。

『組織のボスっていうのは大変だな…その点、俺は気楽な位置だよなぁ…。』

別にジョルノに不満があるのではない。
様々なことを、1人で抱えすぎているような気がして心配なのだ。
もしものことがあった場合は、全て自分が責任を負う。
そんな感じだった。

しかし、当の本人にこのことを訴えても、意味が無いことくらいわかっている。
だからミスタは何も言わず、彼を支えるのだ。
部下として、友人として。

『新入りがいつの間にかボスになっちまったよ。
立派にやってるぜ。
ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ…見てるか?』



「…なに泣いてんだよ。
そんなにおれの名前が知りたいのか?」

いつの間にか潤んでいたミスタの瞳を見て、先程の青年が怪訝そうに言った。

「うぉッ!?
これは懐古による涙っつうか
その…親の気持ち…的な?」

「おれに聞くなよ…。」

ミスタがゴシゴシと涙を拭っていると、ジョルノが「そろそろですか?」と尋ねた。

「ああ、そうだな。デス13が出入りできるようになった。
………ポルナレフのやつ…また同じ反応してやがる…。アイツって正真正銘のマヌケだな。」

「また…?
以前にも彼と接触が?」

「ああ、おれが赤ん坊だった頃にな。捨てられてたおれを、アイツが拾った。」

「そうですか……。」

「親のいない環境…
似たような環境でおれたち育ったのにな…。
お前はギャングスターになって輝いている…。
嫉妬じゃないぜ?
憧れだ。希望。おれたちの希望。
これからも用があったら言えよ。手伝ってやるからさ。」

そう言うと青年は、ポルナレフのいる部屋へと入っていった。

「ジョルノ…。」

「何ですかミスタ。」

「もしかして、お前とアイツは兄弟なのか?」

「………。
それは僕にもわかりません。
ただ、双方とも無責任な父親を持ったようですね。」

「じゃあ…『俺たちの希望』の『俺たち』って…。他にも兄弟みたいな連中がいるのか?」

「無責任な父親ですからね。
それもわかりません。
そもそも、先程の彼と僕が兄弟なんて保証、どこにもありませんし。
僕にとっての兄弟は、ミスタやブチャラティ、アバッキオにナランチャ、フーゴたちですよ。」

「ジョルノ…。」

「良い兄さんであり、
あたたかい仲間たちです。」

「新入りの時に、そういう可愛げのあることが言えてたら、アバッキオとも仲良くなれたかもな。」

「いや…気持ち悪がられるだけだと思いますよ…。」

「はは、そうだな。」

「あ、そうだ!
早く僕たちも行きましょう!
彼ひとりに任せておくと、絶対に悪戯しますから!」

「お…おう!」

急にスイッチを切り替え、部屋の中に駆け込んでいくジョルノの姿が可笑しかった。

『お前もまだまだガキだなぁ…。』

ミスタは独り笑って、前に見える小さな背中に「グラッツェ」と言った。

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あきゅろす。
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