受け継いだ物』(小説)
「Metodo di cottura felice」 3/4
小さく鼻歌を歌いながら、僕はテーブルに向かう。


と、そこでふと考えたことがある。



「……朝食、食べるかな?」



考えても始まらない、か。


僕はベッドルームに足を運んだ。


すると……



「「……あ。」」



彼は僕のベッドから抜け出して、部屋を物色している真っ最中だった。


目は口ほどにモノを言う、とはよく言ったもんで、彼は視線をあちこちにやりながら、どうやら言い訳を考えている。



「……大丈夫?」



君、家の前で倒れてたんだ。


今朝は冷え込んでるし、心配だったから――


そう言えば、彼は申し訳なさそうに眉を下げて一言。



「……すまない。」



うなだれた様子は、まるで飼い主に叱られた子犬のようで。


子犬っていう程小さくはないけれど。



「一週間……」

「…………?」



彼は床にドサリと座り込んで言葉を続ける。



「もうかれこれ一週間、何も食べていないんだ……恥ずかしい話だが、明日アパルトマンを追い出される。」



家賃を滞納してしまってね。



「学校の連中は金持ちの坊ちゃんばかり、親には苦労させてばかりだから行くあてもなくて。……フッ、学校を辞めればいいだけの話なんだが、諸事情でそういうわけにもいかないんだ。家に閉じこもっていても寒いだけだし、少し歩こうと思って――」



気が付いたら、ここに居たんだ。


すまなかった。



「警察に突き出してくれて構わないよ。窃盗未遂だ。」



彼は自嘲し、緩慢な動作でハンズアップする。










そこで僕は、唸った。










「……まぁ、まずは朝食でもどうだい?」



彼は心底不思議そうな表情で、弱く笑う僕を見上げた。








幸せの
  レシピ


(それは、幸せの魔法。)

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