小さく鼻歌を歌いながら、僕はテーブルに向かう。
と、そこでふと考えたことがある。
「……朝食、食べるかな?」
考えても始まらない、か。
僕はベッドルームに足を運んだ。
すると……
「「……あ。」」
彼は僕のベッドから抜け出して、部屋を物色している真っ最中だった。
目は口ほどにモノを言う、とはよく言ったもんで、彼は視線をあちこちにやりながら、どうやら言い訳を考えている。
「……大丈夫?」
君、家の前で倒れてたんだ。
今朝は冷え込んでるし、心配だったから――
そう言えば、彼は申し訳なさそうに眉を下げて一言。
「……すまない。」
うなだれた様子は、まるで飼い主に叱られた子犬のようで。
子犬っていう程小さくはないけれど。
「一週間……」
「…………?」
彼は床にドサリと座り込んで言葉を続ける。
「もうかれこれ一週間、何も食べていないんだ……恥ずかしい話だが、明日アパルトマンを追い出される。」
家賃を滞納してしまってね。
「学校の連中は金持ちの坊ちゃんばかり、親には苦労させてばかりだから行くあてもなくて。……フッ、学校を辞めればいいだけの話なんだが、諸事情でそういうわけにもいかないんだ。家に閉じこもっていても寒いだけだし、少し歩こうと思って――」
気が付いたら、ここに居たんだ。
すまなかった。
「警察に突き出してくれて構わないよ。窃盗未遂だ。」
彼は自嘲し、緩慢な動作でハンズアップする。
そこで僕は、唸った。
「……まぁ、まずは朝食でもどうだい?」
彼は心底不思議そうな表情で、弱く笑う僕を見上げた。
幸せの
レシピ
(それは、幸せの魔法。)
【*前へ】【次へ#】
無料HPエムペ!