受け継いだ物』(小説)
「嗚呼彼等はなんと残酷な」 2/5
スタンドが出ない。


有り得るはずのない事態に気が動転し、花京院に隙が生まれる。
その隙を見逃さず、マン・イン・ザ・ミラーは花京院に拳を降り下ろした。

「ぐ、ぁっ!!」


花京院の体が吹き飛ばされ、備え付けのクローゼットに激突する。壊れた扉の破片が、花京院に降り注ぐ。


「ばかな……スタンドが、出ない…!?」
「違うな。出ないんじゃない、入れないんだ」
「!?」


イルーゾォの指がすぅ、と鏡の外を指す。
そこにいたのはぼんやりと佇んでいる



「ハイエロファント・グリーン!?」
「許可したものだけを鏡の中に引き込む。それがマン・イン・ザ・ミラーの能力だ」

獲物をいたぶる猫の目で、イルーゾォが笑う。口から流れる血を拭い、花京院はイルーゾォを睨みあげた。


スタンドが使えないわけではない。
ならばまだ勝機はある。



「エメラルド・スプラッシュ!」


花京院の指示に応じて、鏡の向こうのハイエロファント・グリーンが薄緑色の宝石を射出する。それは花京院の狙い通り、イルーゾォの頭上の照明を破壊する。砕けた蛍光灯の破片が、イルーゾォに降り注いだ。


「まさかこんなもので俺を倒せるとでも?」


小馬鹿にしたように笑い、イルーゾォはマン・イン・ザ・ミラーを呼び寄せる。
降り注ぐ破片を手で弾くマン・イン・ザ・ミラーににやりと笑うと、花京院はイルーゾォの懐に飛び込んだ。

「なにィッ!?」
「スタンドが倒せないなら、本体を倒せばいい。承太郎の得意な作戦さ」



気品すら感じられる笑みを浮かべ言うと、花京院はさっきのお返しとばかりにイルーゾォを扉に向かってぶん投げた。


「がはっ……こ、この野郎…」
「さぁ、仕切り直しといこうじゃないか」


微笑を浮かべた花京院に、イルーゾォもまた唇の血を舐め、獰猛に笑んだ。

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あきゅろす。
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