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Birthday Song /水原すい様 雲雀さんハピバss


自分の誕生日には興味がなかった。


祝うなんてもっての外だった。


今までは……。




《Birthday Song》




どうしよう。


というのが気付いてからすぐに至った事だった。


所謂「お付き合い」をして初めて迎える恋人 ―雲雀恭弥― の誕生日プレゼントをどうするかをここ何日か考えていた。
まだ中学生だから貰える小遣いに限度があるし、自分の欲望を満たす為にお金を使ってしまう。しかもその週には母の日がある。そうすると益々限られてくる。
そればかりかプレゼント自体を何にしようか考え込んでしまう。
正直何が欲しいかなんてわからないし、渡したところで喜んでくれるかもわからない。でもやっぱり何かを贈りたいから変なものは選べない。


そして無限ループにハマる。


そんなぐるぐると考え込んでいたらゴールデンウィーク直前になり、いよいよ雲雀の誕生日が近付く。


「何がいいかなー」
ぽそりと呟いた言葉だが、綱吉本人は気付かない内に今まで何度か漏らした言葉だったから、散々聞いて(聞こえて)いたリボーンがうんざりしながら答える。
「校歌でも歌ってやればいいんじゃねーか」


聞こえてたんだ、というのは今は関係なく、むしろプレゼント案が引っ掛かった。
「いや、それは、どうかな…」
歯切れ悪く答える。
「そうか?ツナは何かを贈りたいんだし雲雀は学校や並盛が好きなんだから丁度いいんじゃねぇか?聞く相手もヒバリだけなんだし。第一、物にこだわらなくてもいいんじゃねぇか?」


そう言われるとそれでもいいかな、と思って口にした。
「リボーンの案に乗るのもちょっと悔しいけどそうしようかな」
口にしたら意外にも気持ちがスッキリした矢先。
「安上がりだしな」
「お前が言ったんだろーーー!!」
「五月蝿い。じゃあ、あとこいつはどうだ?」
「え?」




五月五日


見事な五月晴れだが、世間はゴールデンウィーク最終日という事で、ニュースでは朝から帰宅ラッシュに見舞われていると言っていた。
それを『雲雀さんじゃないけど遊びに行ってるのに人が多いのも考えものだよな』と支度をしながら聞いていた。


「じゃあちょっと出かけてくるね!」
靴を履きながら背中で母の「いってらっしゃい。気をつけるのよ」を聞きながらバッグを持って元気よく扉を開ける。


実は誕生日にも関わらず、雲雀とは特別に約束をしたわけでたなかった。
向かった先は並中だったが行くとも言わなかったし、その上確実にそこに居るかもわからないが綱吉は学校を目指した。


学校に着くとサッカー部が部活をしていた。
グラウンドを広く使うサッカー部と野球部は普段は譲り合いながら共同で使用しているが、日によってはどちらかの部活しか使わない事がある。その関係で5日は休みだと山本が話していた。
『山本には悪いけどほっとした』
学校に行く事を教えた訳じゃないが、目敏い山本はもしかしたら自分を見つけるかもしれないし、自分と雲雀の関係を知っているから隠す必要はないのだが、『雲雀に会いに行く』という行動を見られるのは気恥ずかしかったから安堵した。


他にも校内で部外動をしているのか、昇降口が開いていたから上履きに履き替えて応接室を目指す。




コンコンと扉を叩き「沢田です」と言うとすぐに扉が開かれた。
開けてくれたのは草壁で「ありがとうございます」とお礼をしながら扉を閉める。


「どうしたの?」
いつもの様に、顔を上げて手には書類持った雲雀がいた。
「今日は雲雀さんの誕生日だから、その、プレゼントを持って来たんです…」
「うん」
「それで、あの、プレゼントというのがここじゃちょっと…」
語尾を弱くしながら頬を赤くして言うと雲雀は立ち上がり、草壁に後は頼んだよと言って綱吉の手を取り部屋を出る。




連れていかれた先は屋上だった。


この時期特有のうっすらと雲の膜が張った青空は優しい色をしているが日差しは容赦ない階段の陰に座り込んだ。
「で、何をくれるの」
ちょっと意地悪い笑顔で催促する。
「あの、最初に謝っておきます。ごめんなさい」
「それは、謝る程酷い物をくれるって事?」
「うっ、…少しだけ」
「じゃあほとんどは?」
「あの、酷い物じゃなくてですね、その、恥ずかしながら小遣いがなくて、でもプレゼントしたかったんです。で、リボーンに校歌を歌ってやればいいんじゃないかと言われてそうする事にしたんですけど、オレ、歌うまくないから、聞き苦しいと思って、だからごめんなさい」


「赤ん坊に言われてそうしたのは癪だけど、綱吉の歌を聞くのは今は僕だけでしょ。ならいいよ。それに謝る事でもないし」
「は、はい。ところで今更ですけど本当に校歌でいいんですか?」
「いいよ。練習だってしたんでしょ。だから早く歌って」
改めて催促された。
「はい、じゃあ」
そうしてすくっと立ち上がり、すうっと息を吸い込んで歌い出した。




歌い終わると「プレゼント、もう一つあるんです」と言ってずっと持っていたバッグを差し出した。
「これもリボーンの案だったんですけど、開けてください」
バッグを受け取るのを確認して綱吉は座る。


開けると中には風呂敷に包まれていた小さめの重箱が入っていた。更に蓋を開けると一段にはちょっといびつなおにぎり、もう一段には一口大のハンバーグ・焦げめが目立つ卵焼き・野菜炒め・焼き鮭、とスタンダードなおかずが入っていた。
「母さんに手伝ってもらいながら一応オレが作りました。味は、大丈夫なハズです」


実は歌だけじゃ流石に物足りないと思った綱吉の気持ちを読心術で読み取ったリボーンはもう一つ案を提供したのだ。
それに乗った綱吉はリボーンに促されて直ぐ様奈々に作り方を教わった。


初めはおにぎりはなかなかうまく三角形にならなかった。しかも料理上手な母から教わっているのに味がいまいちだった。野菜炒めは切った野菜の大きさがバラバラで火が通ってなかったり、鮭は塩を大量にふってしまいしょっぱくて食べられたものじゃなかった。
だけど、奈々の「食べてほしい人がいるんでしょう。時間もまだあるから一つずつ覚えれば大丈夫よ」と諭され、少しずつ上達していった。


難関は卵焼きで最後までうまく巻けなかった。しかもしょっぱいおかずばかりだから甘めの卵焼きにしようとしたら、砂糖を入れると焦げやすいと言われ、案の定巻けないばかりか焦がしてしまい、結局本番もうまくいかなかった。


そして気付くとゴールデンウィークは料理と歌の練習の記憶しかない。
でもそのおかげで形になるものが出来上がった。




「見た目がいまいちなものもあるけど味には自信があるみたいだね」
「はい。母さんに教わりましたから。うちの母さん料理上手なんです」
「そう、それは楽しみだね」
「はい、どうぞ食べてください」
にこにこしながら箸を差し出す。しかし雲雀は受け取る素振りは見せない。そればかりか。
「僕の誕生日なんだから綱吉が食べさせてよ」
などと言ってきた。

「はい?」
小首を傾げて頭に?を浮かべる。
「卵焼き」
「え」
「早く」
「は、はいっ」
急かされて箸を持ち直し、卵焼きを摘まむ。
箸と顔を上げると雲雀は口を閉じたままだった。だからつい。
「はい、あーん」
とランボやイーピン(たまにフゥ太)にしている事をしてしまった。


はた、と気付き一気に顔が赤くなった。
「あ、あああの、今のはたまにチビ達に食べさせるのに言ってるんです!だから、その」


ぱくり


浮いたままだった綱吉の手首を持ち、顔を近付けて食べる。


「甘い」
その一言に我に返り、どうして甘いかを説明する。
「そう。ハンバーグ」
納得した様子で次を要求された。綱吉は慌てて摘まむ。
咀嚼し、飲み込むと次は「おにぎり」と言われ、一つ掴んで差し出す。
そんな動作の合間に雲雀に言われて自分も食べる。




『つ、疲れた』
ようやく食べ終わり、重箱をしまいながら思った。
まさか最後まで食べさせるとは思わなかった。しかもたまに口を閉じるからその度に「あーん」を言わされたりもした。それが恥ずかしかった。
『雲雀さんは恥ずかしくなかったのかな』
そう思いながら雲雀を見ると、奈々が用意してくれたお茶を悠々と飲んでいる。どうやらそんなのは関係なかったらしい。


たまに吹く弱い向かい風を受けながら青空の下、水筒のコップなのにお茶を飲んでいる姿は優雅で恰好いい。
ぽーっと見とれていたらふいに声をかけられた。
「綱吉」
「はいっ!」
「美味しかったよ。ご馳走さま」
見とれていたのはバレていたであろうがそこは自分も気付かない振りをする。


「オレの方こそ美味しいって言ってもらえてすごく嬉しいです。ありがとうございます」
照れくさそうにふにゃりとした笑顔で言うと雲雀も優しく微笑んだ。


「今までは自分が生まれた日なんて興味なかったけど、これからも綱吉が祝ってくれるなら気にしてみようかな」
コップを置きながらふと思って言ったのだろう。しかし、その言葉に綱吉は珍しく眉を吊り上げる。
「『気にする』んじゃなくて大事にしてください!」
力が入り大きな声になったが構わず続ける。
「雲雀さんがこの日に生まれてきてくれたからオレ達は出会えたのかもしれないし、これから先もずっとお祝いしたいんですからね!!」


「…それは、プロポーズ?」
「へ!?」
一瞬目を見開いた雲雀がそんな事を言ったものだから綱吉も目をぱちくりとさせ、思わず間抜けな声が出た。そして今言った自分の言葉を頭の中で反芻してその内容に気付く。
「いいいやいやいや、違います!」
ぶんぶんと首と両手を振る。
「そこまで拒否しなくてもいいんじゃない。でもまあ僕からすればいいか」
ふうっと短く息を吐く。
「え、え?」
「うん、これからも綱吉に祝ってもらいたいから大事にするよ」
「あ、あの?」
「だから来年も再来年も、…十年後も二十年後もその先もずっと祝ってよね。楽しみにしているから」
言いながら綱吉を抱きしめる。


ふいに抱き締められたから心臓がばくばく鳴る。
「雲雀さんばかりじゃズルいです。オレの誕生日も絶対に雲雀さんが祝ってくださいね」
きゅっと抱き返しながら頭を雲雀の胸元に預ける。
「いいよ。綱吉が望むならいくらでも」
雲雀の心臓も少し早く鳴っていた。


こうして大切な唯一人に祝ってもらえるなら自分の誕生日を大事にしようと思った。



















《あとがき》
雲雀の誕生日に間に合いませんでした。すみません。

タイトルと内容の相違は大元の話と変わったからです。すみません。

ツナ自らの「あーん」は取り入れたかったのですが、どうしたら、と思っていたら雲雀が箸を受け取らなかったから出来たシーンです。gj雲雀(笑)

読んでくださいましてありがとうございました。





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水原すい様よりいただきました雲雀さんハピバssです!

ちびっこにするみたいにアーンと言うツナとおとなしく口をあける雲雀さんにキュンとしましたー!そして雲雀さんのプロポーズ!!!すいさんっ私を萌え死にさせたいですか?!(笑)倒れるかと思いました(笑)

やっぱり1827って幸せです。雲雀さんの誕生日祝いは基本応接室、もしくは屋上ですよね(笑)瑞樹も私もすいさんも打ち合わせしてないんですよっ!皆見事に学校と言う事実に私爆笑(笑)

校歌を歌うツナにヒバードも唄う光景が浮かび、コッソリ萌える雲雀さんを想像して憤死する桜井でした!ありがとうございました!
桜井綾





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