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仕掛け /水原すい様(5927)




放課後、いつもより遅くお待たせしました10代目帰りましょう、と言って獄寺が来る。いや、今日は大人しい。
それもそのはずだ。


今年は14日が日曜日という事で金曜日にチョコが行き交っていた。
山本は基本的にチョコを受け取っていたが、獄寺は全てを拒否していた。机や下駄箱に入っていた分はごみ箱行きだった。
そんな事を今までしていたから疲れたのだろう。綱吉は優しく声をかける。


「獄寺くん、大丈夫?」

すると獄寺は眼を潤ませた。

「要らないって言ってんのにあいつらどうやったら日本語を理解するんですか!?いっそ果たしたいです!」

最後に物騒な事を言ったから「それはダメ」と止める。


綱吉は軽いため息をつく。

「チョコあげたいって子は獄寺くんが好きなんだからあまり無下にしちゃだめだよ」

「…はい」

諭されうなだれる獄寺に綱吉は声を小さくしながら続けた。

「ってこれは一般論。女子には悪いけどオレとしては全部断ってくれて嬉しかったりする」

「じゅ」

顔を上げると嬉しいと言いつつ、女子への罪悪感があるのか、少し困っている笑顔の綱吉が居た。




「あのさ、明後日だけど」

あれから特に話さずに帰路についた。
学校から程よく離れた頃、綱吉から話しだした。

「はい」

「獄寺くんちでいい?うちだとチビ達がいるからゆっくり過ごせないし」

「それは構いませんよ」

「よかったー。じゃあ獄寺くんちで」

「あの、10代目」

ちょっと尻込みしながら口を開く。

「何?」

「申し訳ないんですが俺、10代目からのチョコいりません」

綱吉の歩みが止まる。


「…それって」

どういう意味だ。バレンタインに一緒に過ごすのはいいがメインであるチョコがいらない?まさかバレンタインに別れ話をするつもりで、だから獄寺の家がいいと言ったのか?とか色んな考えが頭をよぎる。
止まって放心している綱吉に獄寺は言葉が足りなかったと気付きすぐに訂正した。

「あああの、すみません。そうじゃなくて、俺から差し上げたいと思ってるんです!」




そうしてバレンタイン当日。


獄寺には日曜日にチョコを渡そうと考えていたが、自分からあげたいと言われたからその言葉に従い何も持たずに訪問した。厳密には母から獄寺へ感謝チョコは持っていた。


チャイムを鳴らしその3秒後にドアが開く。

「いらっしゃいませ」


「これは母さんから感謝チョコだって」

渡しながら勝手知ったるとばかりにリビングへ向かう。

「そうでしたか。ありがとうございます」

大事そうに受け取りキッチンに入る。
綱吉は定位置となっているソファーに座って獄寺を待つ。


「どうぞ、10代目」

そう言って綱吉用のマグカップが置かれる。

「ありがとう」

柔らかい笑顔で礼を言い、手を伸ばしてカップを口元に持ってくるといつものカフェオレとは違う甘い香りが漂ってきた。ホットチョコレートだ。

「俺からのバレンタインチョコです」

一息ついてから渡されると思っていたのに、いきなり出てきたから面食らう。こういう所がイタリア人だよなぁ、と思いながら飲む。

「すみませんがそれ飲んでちょっと待っててください」

そう言って自分用のエスプレッソをテーブルに置き自室に行く。


結局もう一口飲む間に戻ってきた。


「お待たせしました。どうぞ受け取ってください」

隣に座るやいなやそう言ってピンクのガーベラを基調にした小さな花束を差し出した。


受け取りながら「これは?」と獄寺と花束を交互に見ながら聞いた。

「日本では女性からチョコを贈るみたいですがヨーロッパでは男性から花束にカードを添えて贈るんですよ。だから俺にはチョコよりもこっちがメインなんですよ」

「そうなんだ」

文化の違いに驚いた。てっきり世界共通なんだと思い込んでいたから。そんな事を考えていたら獄寺が口を開く。

「実は俺から渡すにあたってやましい気持ちがありまして」

「やましい?」

「はい。日本にはホワイトデーというものがあるんですね」

「?うん」

「それはバレンタインの三倍のお返しをしなければいけないみたいだとか」


そこまで言われると流石にわかった。

「み、たいだね」

「10代目からチョコをいただいてホワイトデーに三倍返しをしてもよかったんですがここはやっぱり10代目から三倍、お返しをいただきたいと思いまして」

そう言って顔を近付けてくる。


二人きりになればそういう雰囲気になるのはわかっている。しかし今は話を整理するので精一杯だった。

「えと、じゃあ何か欲しいものある?」

花束相当の三倍のものって何だ?と少々的外れな事が頭に浮かんだ。


すると獄寺は綱吉の手から花束をそっと取り上げテーブルに置く。そしてそのまま片手は頬に添え、もう片方は綱吉の手を取りふっと笑う。

「俺言いましたよね『やましい気持ちがある』って」

そう言ってキスをする。


触れるだけのキスから深いものへと変わる。




「………はぁ」

口唇が離れ、一呼吸した綱吉の口元を拭いながら伝える。

「こういう意味です」


そして普段の満面の笑顔と違う、意地悪い笑みで綱吉を見つめながら更に言った。

「ホワイトデー楽しみにしていますよ」




−一ヶ月後−
「来年からバレンタイン禁止」

「ええっ!?」

ベッドに俯せている綱吉は横に要る獄寺に恨めし気に言った。その言葉に心底驚いた様で綱吉を凝視した。

「オレからチョコ渡さないし獄寺くんからも貰わない」

「そんな…」

「じゃない」

ぴしゃりと言い放つ。が、結局獄寺に甘い自分がいた。

「…ホワイトデーは三倍返しじゃないと嫌だっていうなら禁止。だけど同じだけのものを返すっていうならいいよ」

「10代目。…わかりました。では来年からバレンタインにはありったけの愛を語るのでホワイトデーには同じだけ返してくださいね」

いつも見る満面の笑顔でなかなかとんでもない事を言った。


自分から「同じだけ」を返すと言ったものの、やっぱりバレンタイン自体を禁止すればよかったと後悔した綱吉だった。































《反省会場》
三倍返しを使えるのは一回だけだと分かってやった確信犯な獄寺(笑)

ネタは『バレンタインに受けの子に貰うよりホワイトデーで三倍返し(してもらえる方)のがおいしくない?』というどの作品にも使えるものです。

ホットチョコの香りは換気扇を「強」にしてあるのでわからなかったという事で。

このSS(あくまでこのSSに限り)の二人は今後もバレンタインは獄寺からでホワイトデーはツナからという事になりますね。ツナが禁止しない限りは(笑)それに私がびっくりしました(笑)

花はガーベラはツナに合うなーと思いそうしました。ついでに花言葉も調べ、迷った私は綾さんの超直感に頼りました。それが活かせてないのはご愛嬌でお願いします。
ちなみに、ピンクのガーベラの花言葉は「熱愛・崇高な美・崇高な愛・童心」。迷ったのは黄色で、「究極の愛・究極の美・親しみ」とどちらも中学生にはちょっと重い愛でした(笑)そこはガーベラという花のイメージを先行にして花言葉はそのおまけで考えた、という事でお願いします。

読んでいただきましてありがとうございました。


†††††††††††

水原すい様より頂きました、バレンタイン5927ss!ありがとうございますー!

今回も、獄寺くんがチョコ全部断るとか男前な所に、キュンとなりました★

花束にホットチョコ、三倍返しをおねだりに、もう獄、こいつぅ(額を指で小突く)と、ワクワクでした!

そ し て!十代目!三倍返しお疲れ様でしたー(笑)もうどんな事された(した)のかは、皆様のご想像に〜と言う事ですので各自補完お願い致します★

ss頂く前に、ピンクと黄色の色選択、花言葉の意味もあったのですね深い!ピンクのガーベラ私も好きです!

本当に今回も掲載許可をありがとうございました!5927可愛いっ★





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