SILVER SOUL
V
ガツッ
金属がぶつかり合う音でもなく、ましてや人と人―肉がぶつかり合う音でもない音が鼓膜を大きく振るわせた。
そして、やはり遅れて…ん、なんだろう、この甘ったるくて食欲をそそる香りは。
「…かわいそうじゃねぇか、女の子1人に3人も襲い掛かっちゃあ…」
そしてこの締まりの無いセリフの言い回し…センス。
なんだかぼんやりと心当たりが有る気がした。
いい加減に力の入れすぎで少々いたいので目を開けてみると、目の前には広い背中が。更に首を出してその人物の前方を見ると、あのヒョウ柄コスプレ野郎共はみんなぶっ倒れていた。
「え、なにこれ。」
「あ?」
思うままに今の心情をつぶやくと、目の前に立っていた人が私に気を向けた。
そして、何かを言いかけたらしく息を吸ったが、後方からの足音を聞いて言うことをやめてしまった。
「…銀さあああああんっ」
思考回路をほぼ停止させている私は、その場でボーっと立ち尽くしていた。
私の前にいた人は、後方からやってきた若い感じの青年と何かを話していた。
―なんだろう、なんか、この感じ、知ってる。
そう思って、後ろを振り返ってみる。すると、ばちり、と青年と目が会った。
彼は真面目そうな顔立ちで、大きめな黒縁めがねをかけている。見た目でだいたい16〜18歳くらいであろうか。まだ青臭くあどけない感じがある青年だ。
でも、悪そうな人間では無いことは分かる。
「えっと…銀さん、知り合いですか?」
「いや、知らん。」
私のそばに居た“銀さん”と呼ばれた彼は、その青年のそばへ行ってコソコソとなにか話している。
ああ、全て聞こえている。
『……また…t…ね…ぇ…』
「っ」
なんだ今の。
2人がコソコソと話している姿と何かがリンクして、瞬間的にフラッシュバックを起こした。
これは、女の人…おかあさん?
『まあ、いやあね…またあそこのお子さん……』
「…っ!!」
違う、私を笑っているのは…知らない人…。
でもどうして。どうして私を見て笑っているの。
そこで意識が途切れそうになる。でも私は倒れたりはしない。偏頭痛がしてくらくらする。断片的に重い出せたのはそこだけ。
他に、なにか…
「おい、大丈夫か・・・・」
彼が何か言いながら駆け寄ってくる。でももうほとんど聞こえない。
大丈夫……ぜった、い…私……たおれ、…な…い…。
そこで完璧に意識がなくなった。
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