死にネタ 忘れても忘れないで。(仁王×柳生) 「柳生、レイプドラッグって知っちょるか?」 「はい?仁王…君?」 愛してはいけないと、何度も心に誓った。 穢れた俺に、人を愛する資格などないと、何回思い知ったか、分かっていたはずなのに。 「どっかの外国じゃ、持ち込み禁止に指定されちょる薬じゃ。日本じゃ普通に処方されてる睡眠薬の事ナリ。」 「仁王君…また何か変なコレクションでも始めたんですか?」 「まあな。裏ルートで手に入れたんじゃ…。」 せめて身体だけでも、なんて…自分勝手な思い。 だから穢れているんだな、俺は。 「飲みんしゃい。」 「んっぐ!ゲホッ…な、何するんですか!」 「柳生、俺はな…お前さんが好きじゃ。手ぇ出したくて出したくてかなわん。」 どんなに好きでも、柳生はただの友達としか思っていないのなんて、分かってる。 「でも…柳生は愛してるの意味で俺を好きじゃないよな。」 「…仁王君は…私にとって、親友です…。」 「だよ、な。今飲ませた薬は、飲んだ前後の記憶があやふやになる。だから、俺は今からお前さんに手を出す。」 「…え?」 「大丈夫じゃ。起きたら何もかも忘れちょるから…。」 穢れた俺が、綺麗な柳生を穢す。 禁忌を犯す俺を、神は裁くだろう。 「ッ!?な、何ですかこれ…!アルコール…?」 「なぁに、作用が早くなるだけじゃき。」 俺は柳生を縛り上げた。次第に柳生はフラフラとしてきて、目も虚ろになってきた。 「…仁王…君…。」 「眠くて眠くて…堪らんじゃろ?」 「私は…仁王君…が…好きです、よ?」 「親友として、だろ?」 柳生はそれ以上口にしなかった。嘘がつけない柳生。 「…こんな、の…いけません…。」 「だから、柳生は全部忘れてしまうから、大丈夫じゃ。」 そこで柳生は目を閉じた。俺は洋服に手をかける。 でも、白い肌が目にさらされた途端に、俺の手は止まってしまう。 「いけん…。手が…これ以上動かん。」 恐れている。俺は柳生に手を出せない。出したくない。 抱きたい。思い切り愛したい。愛しては、いけない…。 「穢れた俺が…綺麗なお前さんを穢すなんて…できん。」 苦しい。近くにいるのに、とても遠くに感じる。 「なぁ、キスくらいは…許してくれるか?」 何も答えてはくれない柳生の、綺麗な唇にそっと自分の唇を重ねた。 「あ、れ?仁王君?私は…?」 「おお、やっと起きたか。教室で居眠りとは柳生らしくないのう。」 「わっ!?もう夜じゃないですか!どうして起こしてくれなかったんですか…。」 「悪い。お前さんがあまりにも気持ち良さそうに寝ちょるもんだから、寝顔見ながら本読んでたんじゃ。」 やっぱり柳生はさっきの事を忘れていた。でなければ、俺を見て何らかの反応を示すだろうから。 「なぁ柳生、せっかく暗いんじゃし、屋上から夜景でも見んか?」 「え?」 「滅多に見られん景色、二人で堪能じゃ♪」 「ちょ、仁王君!?」 夜風が身体をすり抜ける。とても心地良い。けれど、俺はさっき柳生に酷い事をした。 償えと、頭の中に響く。 「綺麗じゃなー…。」 「こう見ると、街の明かりも悪くないですね。」 柳生は微笑む。それがまた、俺の心に突き刺さった。 「のぉ柳生…愛しとぉよ。」 「え?何です?」 「んーん?独り言じゃ。はぁー、さて…帰るかの。」 「そうですね。」 柳生が扉に向かって歩き出す。俺はフェンスに向かって歩く。 「柳生…さよならじゃ。」 「…なっ!?仁王君…ッ何をしてるんですか…!」 「愛しとぉよ。ホントに…どうしようもないくらい…。」 「何を…。それ以上…そっちに行ったらいけません…!」 必死な顔で、俺を呼ぶ。 もう、無理だ。俺は柳生を愛し過ぎた。 穢そうとした俺が許されるはずもない。 「許されないって、分かってた。お別れじゃ。」 「何、言って…。」 ゴメン。今さら赦してなんて、言えるわけがない。 「バイバイ…。」 頭から落ちるように、俺は屋上から飛び降りた。 最後に見えたのは、屋上から何かを叫ぶ柳生の姿。 俺はそれだけで満ち足りた気分になった。 忘れないで、忘れないで?俺が柳生を好きだった事を。 一生、刻み込んで?俺の存在を。 のぉ柳生、愛しとぉよ。 世界中の誰より、お前さんが好きじゃ。 狂おしい程に…。 END -------------------------------------------------------------------------------- 仁王なら怪しい薬の一つでも持っていそうです。このタイプの薬、現在処方されてますが普通に飲んでも 若干記憶がアヤフヤになる事もあります。が、絶対忘れてしまうわけじゃないです。 たまには、弱々しい仁王さんもいいものですね。切なくてぎゅーってなります。 ここまで読んでいただき、ありがとう御座います。 こんなんですが、感想頂けると嬉しいです。 write.2008/12/15 [*前へ][次へ#] [戻る] |