詩 『ゼロ』 夢を見た。暗くて冷たい闇の中を彷徨う夢を。 行く当てなどなく、何をしたいのかも分からない。 不安が、心を押し潰す。 恐怖を蹴散らすように声を出してみた。 『―――…………。』 何も、響かない。自分の声さえ。 逃げたい。ココから。 走る。どこまでも走る。この闇から抜け出したくて。足がもつれて、膝を擦り剥いても。 サァッと、視界が拓けた。そこは、赤の世界。赤い雨が身体を打ち付ける。 逃げなきゃ。 逃ゲナキャ。ココハ危険ダ。 心臓が早鐘を打つ。冷や汗が背を伝う。足が、竦んで動かない。 何で、動けない? ―すべてから逃げたかった― 今、ここに居るのは何故? ―だから、逃げた― どうしてここはこんなにも恐いの? ―すべて手放した― 最後に見えた、美しい夜景。 ああ、そうだ思い出したよ。 目を開けると、白い天井。管に繋がれた身体。横で泣いている人。 「ッよかった!気が付いたのね!」 手を握る暖かい手。 頭が痛い。身体が動かない。 『誰?君は誰?…僕ハ誰ナノ?』 僕は、僕であって僕でない。 『…夜景が見たいんだ。』 手放した中で唯一残っている。 「何をしに行くの?」 『…すべてを取り戻すため。』 さあ、ゼロを作りにいこう。始まりは、そこからだ。 夢は、今日でおしまい。 明日は『ゼロ』から。 END -------------------------------------------------------------------------------- 飛び降りた貴方は、束の間の夢を見た。目を覚ました時は、『ゼロ』じゃなかった。 スタートに戻りたい貴方は、また羽ばたく。そんな詩。 ここまで読んでいただき、ありがとう御座います。 こんなんですが、感想頂けると嬉しいです。 write.2006/04/29 [*前へ][次へ#] [戻る] |