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BL1
とろけるように甘く…。(忍跡)
今日は特別な日。生まれてきてくれてありがとう。





「あっとべ〜!あとべアトベ跡部ッ!!」

「!?…断る。」

「だー!まだ何も言うとらへんやん!」

可愛いくせして可愛くないことを言う跡部。今日がどんなに大切な日かわかってないんだろうか。

「どうせ『誕生日おめでとさん!俺をプレゼントや。』とか言う気だろ?」

俺の声マネをしつつふざける跡部。

「あ〜!!俺が言う前に言うたらアカンやん!」

「ほらみろ。やっぱり。」

「ちゃうわ!俺が言うとんのは『おめでとう』の方や!」

言いたかった人に言われてしまう虚しさ。折角用意したプレゼントも泣いていることだろう。

「は?そりゃすまなかった。」

たいして本気にしてもらえなかった。さっと謝ると部室へと歩いていってしまった。







次に会えたのは昼休み。教室で食べていれば山のように来る女子の大群。

一人一人にお礼(俺様口調で)を言い、スマイルを向ける。そのたびに沸き上がる黄色い声。

その声が欝陶しいと思ったのは今日が初めてではないが。



(嫉妬やん、コレ。情けな…。)



「…後で処分するから…。」

「…え?」

ぽそりと呟いた言葉に目を丸くする俺。跡部の顔を見れば少しだけ照れて笑っていて。

「…お前の分以外…な。」

付け足された言葉には、さらに驚かされた。

俺は冷静さを保つだけで精一杯だった。





「どういう風の吹き回しや?ビックリするやん、あんなん言われたら。」

「う、うるせぇな。…今朝のこと、悪いと思って…よ。」

午後練での会話。昼のことについて、率直な感想を述べてみる。

「もしかして朝からずっと気にしてたん?」

「…違ぇよ。」

ふいっと顔を逸らしてコートに向かって行った。耳が赤かったのは錯覚ではないことを祈る。





「なぁ侑士、今日は調子いいじゃん。なんかいい事あったのか?」

岳人にまで伝わってしまう程、さっきの事が嬉しかったらしい。

「あ、いい事と言えば今日は跡部の誕生日だったなー。女子から沢山プレゼントもらってたなぁ。」

「せやなぁ。」

「羨ましいぜー。ま、一応俺もプレゼントしとくか、食べかけのお菓子でも。」

「…ゲンコツ食らうで?それ。」

女子からのプレゼントには妬いたが、こういう友情プレゼントには嫉妬心は起きなかった。

「あ、ならポッキーとかどうや?」

「跡部とポッキーゲームしたいだけだろー?でもちょうど今、バッグにあるぜ?一袋。」

こんな会話をしつつ、部活を終えた。







「ったく、岳人のヤツ食いかけの菓子もらっても嬉しくないんだよ。」

「そう言いつつ食ってるやん。あ、残しといてや?」

帰りがけ岳人にもらった菓子をポリポリ食べる跡部。ポッキーを食べる口が尖っているのが可愛かった。

「一本だけな。」

にやりと笑ってそう言った。

俺の考えは読まれているようだ。しかしそれは一本分ならしてもいいという事になる。

「可愛ぇ事してくれるやん。祝われるヤツが祝うヤツを喜ばさてせどないすんねんな。」

クスリと笑えば赤くなる顔。きっと夕日の所為だけじゃないはずだ。





「おじゃまします。」

今年の跡部の誕生日は火曜日で、パーティーを開く予定などで先日の日曜日にすでに家で済ませていた。

「跡部の誕生日に跡部を独り占めできるなんて幸せモンやな。俺は。」

ただプレゼントを渡すだけではなく、一緒に祝えることが嬉しかった。

「…それは…俺のセリフだ…。」

「え?」



「…ッだから、自分の誕生日に…す、好きなヤツと…一緒に居られる…っつうのが…だよ。」



しどろもどろに話す跡部に顔を赤くする俺。

「もぉ、今日の跡部…色々反則や…。」

「…忍足…。」

「ッあかんあかん!ちょ、ちょっと待っててな!今ケーキ持ってくるわ。」

今日だけはいきなり行為に及ぶわけにはいかない。きちんと祝いたいのだ。





「お待たせしましたぁ!」

おぼんの上には二人分のケーキとカクテル。とは言っても明日も学校だ。コップに一杯だけ。

それと、昨日買っておいたポッキーをワイングラスにあけて。

「んだよ。すでにポッキー用意してたのかよ。」

「ぬかりはないで?それと酒は一杯だけな。」

「ま、妥当だな。」



「…誕生日おめでとうな。」

ちゅ、と頬にキス。

「…!!お、前なぁ、不意打ちは卑怯だっつの。」

見れば耳まで赤くなっていて。その姿に愛しさがあふれた。



「ほな、ロウソクの火、消してぇな。」

俺が歌を歌い、跡部がロウソクの火を消して、目が合って、ワイングラスを持って乾杯。

「生まれてきてくれてありがとう。今、一緒に居られて幸せやで。」

「ばか、何真面目になってんだよ。照れるだろ…。」

「目一杯照れてぇな。あ、これプレゼント。たいしたモンやないけど。」



跡部に渡す小さな袋。中にはチェーンの付いた指輪。



「ホンマは本物の指輪渡したかってん。せやけど予算オーバ…跡部?」

跡部は大きく目を見開いたまま固まっていた。

「跡部?気に入らんかった?安物は嫌やった?」

「…違ぇよ。…金額なんて関係ねぇ…。」

「なら、どうしたん?指輪なんて…意味重すぎたか?」

「違ぇよ!!嬉しいんだよ!お前…俺の心臓止める気か…ッ!」

下を向いたまま叫ぶ跡部。右手でクイッと顔を上げてやれば切なげに照れる跡部の顔。

その目は酒のせいか微かに潤んでいた。



「…忍足…キス、して?」



そんな上目遣いでお願いされて断れる訳がない。

「…好きや…大好きやで…?」

「…ん、俺も…。」

「…ケーキ、食べよか。」

「ん。」

本当はクリームを塗り付けて食べてしまえたらどんなにいいか。今日だけは跡部に喜んでほしい。

だから我慢。明日も学校なのだ。機嫌を損ねたくない。







「…ぷっ、ばぁか。クリームついてんぞ?」

跡部の舌が、俺の唇の左端を舐める。

「甘…。ずいぶん甘いケーキだな。お前。」

「…あ、跡部…あんま煽んなや…。」

明日の事を気遣って我慢しているのに。

「…ばか、気付け。…シテほしいって言ってんだよ。」

「…どうなっても、知らへんからな…。」





とろけるように甘い、大好きな君。生まれてきてくれてありがとう。そう言ったときの照れた顔が、愛しさを生んだ。





その後跡部が指輪の内側に彫られた文字を発見するのは、また別のお話。







『to.KEIGO…from.YUSHI』







END


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2005年の跡部様の誕生日企画ssです。おおおお…!!!!!!甘ッ!甘すぎッ!砂糖吐けるよコレ…。
そして私にしてはめずらしいエロンなし☆(笑)恥ずかしいほどバカップルを目指してみた。

ここまで読んでいただき、ありがとう御座います。
こんなんですが、感想頂けると嬉しいですv
write.2005/09/11

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あきゅろす。
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