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カキツバタ
5

「こう言っちゃなんだけど、柳様が江島に騙されることなくなるわけだから、ムカつくけどちょっと安心だね」

でも、会長と江島がもしそういう関係になっちゃったら、あの方ともっと近くなるかも知れないんだよね……?

ズキン、と胸が痛んだ気がしたけれど、それを隠すように無理に笑った。

「……そうだね。でも、やっぱり江島何かがあの会長様に近づくのは人として許せないかも」

「?珍しいね、柳様命の楓ちゃんが。でもあの江島だもんねぇ……」

言いながらも江島の方をチラ見した凛ちゃんは、クラスの人気者と楽しそうに話す彼の姿に眉値を寄せた。


「ほんっっとキモい……」

何か言ったのはわかったんだけど、周りの声にかき消されて聞こえなかったから子首を傾げる。

でも凛ちゃんはすぐに何事もないようにニッコリ笑って、違う話に切り替えてしまった。








『生徒会長に本命が出来た』という噂は1日で全校生徒に広まった。

もうどこに行ってもこんな感じの話しか聞こえてこなくて、『会長を騙してるヤツは誰だ!』なんて血眼で探してるみたい。

普通の生徒もだけど、会長の親衛隊なんかもう怖くて怖くて仕方なくなってる。


僕はやっぱり様子見。まだ自分の気持ちがハッキリしなくてモヤモヤしたままただ時間だけが過ぎてしまってる状態で。


気付けば季節は体育祭の時期に迫ってた。



「じゃあとりあえず色々決めるぞ」

だるそうに黒板に競技名を書き込んでから担任の先生が言う。それに反応したのは一部の生徒だけで、大半の子達は外の暑さを思って嘆いた。

因みに僕は後者。

正直運動は得意じゃないし、チームワーク、チームプレーっていうのも苦手。

だから僕にとって体育祭っていうのは昔から憂鬱な行事なんだよね……。



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