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カキツバタ
7 TAITO SIDE


初めて栄二に会った時もそうだった。
その時はまだ友達ですらなく、つか顔さえも見た記憶がなかった(クラスは同じだったらしいけど)

あのチームの所為で人生初の虐めにあい、油性で真っ黒に近くなるまで落書きされた机を前に途方にくれていた時だ。

放課後で俺一人しかいない教室に、ヒョロリと栄二が表れたんだ。

『あれ?お前……江島、だっけ?転校生の』

ヘラヘラした顔で話し掛けてきて、俺は自分の名前を知ってた事に驚いた。

『何で名前……』

『?だって同じクラスだし、覚えるっしょ。つーかその机……虐め?』

『え?あ、ち、違うよ……』

若干板に付いたオタクの真似をしながら、それでも確かに俺は動揺していた。

この学園に入ってから普通に話し掛けてきたのは仁くらいだったから(一部のやつらは除外だ)

こんなふうに話し掛けられて、思わず素になってしまいそうで。

しかし、戸惑う俺を余所に栄二は若干怒ったように顔を歪めた。

『俺、虐めってちょー嫌い。見てて腹立つんだよな……なぁ、その机掃除すんの?』

『え、え?あ……うん』

『じゃあ俺も手伝ってやる』

ニカッ、と俺に笑いかけると、栄二はそのまま机を綺麗に拭きはじめた。

良い奴だ。

第一印象は完璧だった。

その日から俺達は一緒にいるようになったんだ。
仁と栄二が仲良くなり、栄二は俺が誰に呼び出されそうになっても庇ってくれたりしていた。






「ありがとな……」

今思えば、あの時もちゃんとお礼を言ってなかった気がする。

でも面と向かって言うのはめっちゃ照れくせぇから目線を逸らしながら呟くように言った俺に、栄二はやっぱり笑顔で返してきた。

「じゃ、後は任せろよ」

「靴は捨てていいからな。じゃあ、宜しく」

別れてからスリッパを借りて教室へと向かう。


そんな俺の後ろ姿を、栄二がずっと見つめていたなんて、気付きもしなかった……。




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