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カキツバタ
2

「はぁ……わかりました」

困惑混じりに軽く頷くと、寮官さんは「んなら、よし!」と言って部屋に戻っていった。


えっと、とにかく新しく来る同室者さんと問題を起こさなければいいって事だよね?
問題って……例えばどんなことだろう。

全然理解出来なかったけど、いつまでもエントランスにいるのは気まずくて僕は部屋に戻る事にした。



見慣れた部屋の番号を横目に見つつ、いつものようにカードキーを通す……

「あれ?」

カチャン、という鍵の開く音がしなくて、どうやら鍵が閉まっていないようだった。

朝確かに鍵を掛けたはずだけど、忘れちゃってたのかも。

疑問に思いながらも、忘れたのなら仕方がない。今度から気をつけようと内心反省して扉を開ける――。


「えっ?」

直後に視界に入った光景に僕はポカンとした。


……凄く、綺麗になってる。


いつもなら開けた瞬間に鈍い色の床が僕を迎えるのに、今日はピカピカに輝いた床が出迎えてくれた。
それだけじゃなくて、栄二が置いて行った服とか雑誌とかが廊下に散乱していたはずなんだけど……それもない。

僕、部屋を間違えちゃったのかも!

慌てて扉を閉めて番号と表札を確認してみたけど、やっぱり見慣れた番号と名前がそこにはあった。

ということは、僕の部屋で間違いはないはず……。


あ、そういえば、新しい同室者さんが来るとか言っていたけど、もしかしてもう来てるんだろうか。

だとしたら、その人が片付けてくれたの?


……凄い、良い人だ……。

物凄く感動しながらもう一度扉を開けて、恐る恐る中へ入ってみる。

そっと玄関先に目を向けると僕のじゃない靴が一足綺麗に揃えられて置いてあった。
サイズからすると、あんまり僕と変わらないみたい。




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あきゅろす。
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