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カキツバタ
12


「……バカ栄二。僕の言うこと、何でも聞くって言い出したのはそっちなのに」


急に照れくさくなって、若干そっぽを向きながら全く関係ない話に切り替えてしまった。

泣いてグチャグチャな顔を至近距離で見られた事や、キスされただけで(しかも瞼の上だったし)泣き止んでしまったのが思い返すと恥ずかしい……。

そう思うと顔が熱くなって、只でさえ走って汗をかいてたのに、更に吹き出た気がした。

「聞いてるだろ、ちゃんと」

僕が無理矢理話題を変えた意味を感じ取ったのか、栄二は笑みを交えながら話に乗ってくれる。

そのまま立ち上がって、ポン、と一度だけ僕の頭を叩くといつものようにソファに寝そべった。


「……でも、全然役に立ってないよ」

「ええ?立ってるって〜。だってホラ、俺ちゃんと江島と仲良しだし」

「体育祭の時、結局江島を見失っちゃうし……お陰でどうなったのかわかんない」

「う……それは、俺にも色々あったんだよ。悪かったと思ってる」

「本当に?」

ジーっと見つめると、瞳だけをキョロキョロさまよわせて、ほんの少しだけ頷かれた。

怪しすぎる……。


まぁ、結局制裁は失敗したんだからいいんだろうけど。

「あ」

「あ?」

そうだ!
僕はこんな下らない会話をしにきたわけじゃないんだった。

そう唐突に思い出して立ち上がり、ソファに寝転ぶ栄二の横で同じ目線になるよう床に座り込んだ。

「栄二、僕、わかったんだ。自分の幸せが」

「……は?」

「ずっとモヤモヤしてたけど、わかったの。柳様が幸せであることが僕の幸せ。柳様の望みを叶える事が僕の望み。僕が少しでも役に立つ事で柳様が幸せになるなら、もう生きていかなくていいよね……!」

言ってるうちにさっき感じた感動と興奮が蘇ってきて何だかドキドキする。

考えるだけでこうなってしまうんだから、叶ってしまった暁には僕はどうなってしまうんだろう。



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あきゅろす。
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