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call my name (hnsk)


「………あずさ…」
甘い吐息とともに紡がれる。




梓。
自分の名前がキライだった。
女みたいだとからかわれたことは数知れず。
いい名前だって親や周囲は言うけれど、身長180cmの高校球児に似合うわけがない。
それでも。
好きなヤツが甘い声で呼ぶなら、この名前も悪くない。


「………あずさ…?」
甘えるように擦り寄って、オレを呼ぶ。
「……あずさ…」
オレの首に腕を回して。
耳元で甘く囁くように。
「ねぇ、あずさ」
幼い子供みたいに、舌足らずな声で拗ねるように。
「あずさ」
沈むオレを励ますように、時には優しく叱るように。


キライだった自分の名前。
それをお前は宝物のように大切に呼ぶから。
お前が呼ぶオレの名前は、大切なものになった。





「勇人」
少し低めの声でオレを呼ぶ。
甘えるように躯を寄せれば、優しく抱きしめてくれる。
「…勇人」
オレの腰に腕を回して。
広い胸に抱き寄せられる。
「…勇人…」
素直に甘えることが出来ないオレをあやすように、背中を抱く。
「……ゆうと…」
時にはオレに甘えるように、首筋に顔を埋めて。


シニアのチームメイトからも呼ばれていた名前。
好きとかキライとか、考えたことないけれど。
キミの低い声が甘く囁くようにオレの名前を呼ぶから。
愛おしむように、優しく優しく呼ぶから。
キミが呼ぶオレの名前は宝物みたいで、少しだけ擽ったい。







それは二人だけの合図。

チームメイトから。
主将と副主将から。
仲の良い友人から。


恋人へと変わる合図。

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あきゅろす。
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