わんぴーす
1
『え、うそ、なんでこの時間に来てんの?』
いつも通り登校した名前はこの時間帯にはほとんど見かける事のない人物の姿に驚きの声を上げた。
「るせーな、たまにはそういう事だってあるだろ。」
頬杖をつき窓の外に視線を逸らすロー。
名前はそんな彼をしげしげと眺めながら自分の席である彼の隣の席へと腰を下ろした。
ちなみにローの席は教室の一番後ろの窓側。クラスの誰もが羨む席、と彼は信じている。
『なに、なんかあるの今日?』
「なんもねーって」
『登校デートくらいで照れるなよ』
「照れてね…って何で知ってんだよ!」
『はははは!見ちゃった〜後つけてみちゃった〜』
「じゃあ俺と同じ時間に登校してんじゃねーか!時間差で教室入ってくんじゃねーよ!」
『いや、それはペンギンが自転車留めてくるってゆーからそのまま付いて行って…』
「アイツも居たのかよ!あッお前!」
教室の扉に隠れながら半分だけ顔を覗かせたペンギンを見つけてローは叫んだ。
「…今回は長続きするといいな…」
「うるせぇ!」
ローが机を両手で叩き立ち上がった瞬間にペンギンはサッと頭を引っ込めそのまま姿を消した。おそらく自分の教室へ向かったのだろう。
『別に隠さなくてもいいじゃん、面白いんだから』
「コッチは面白くねーからだよっ!」
怒りをぶつけ損なったローは苛立ちを隠すことなく、それでも大人しく席に着いた。
「……おい、お前俺の椅子に何を置いた。」
座った瞬間感じた違和感の正体を名前に問うと、名前は肩を震わしながら口を手で押さえていた。
『ぶふッ……凄い…ッ…バナナがペチャンコ…ッ…ッ』
「てめぇ…!!!」
涙を浮かべて大笑いしながら脱兎のごとく教室を駆け出す名前を鬼の形相で追いかけるロー。
静まり返った教室には我関せずと無表情を決め込む生徒達。そして諦めた様に微笑む担任教師が朝のホームルームを開始した。
残 念 す ぎ る お 話 。
始まります。
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