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エプロンをした屈強な男が部屋に飛び込んできた。
褐色の肌に、全身、顔にまで白い刺青みたいな模様が入っている、見たこともない男だった。
「目ぇ覚めたんか! どうした? なんで泣く? どっか痛てぇのか?」
男はずんずん歩み寄って来ると、泣きじゃくるぼくを、無理矢理その腕の中に押し込めた。
「よーしよし、でぇ丈夫だ。心配すんな。ミスターは帰った。お前は自由になったんだ。オッチャンはお前の味方だ。お前を虐めたりしねぇ。な?」
男は訳の分からない慰めの言葉を連ねながら、その厚い胸板にぼく押し付け、あやした。
高い体温に交じって、幸せな匂いがした。
甘い匂い――焼き菓子の匂いだ。
すると、嘘のように涙が引っ込んで、強張っていた身体も緩んでしまった。
ぼくは少し驚きながらも、もっと安心したくて、鼻を擦り寄せた。
「……犬みてぇなヤツだな」
男は困惑したように呟いた。
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