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 シュクルは言われたとおりにした。
 ためらう気持ちはなかった。
 ジャンの家で目を覚ます前の記憶が一つでも取り戻せるのなら、誰の言いなりにさえなってもいい。

「深呼吸を二つしたら記憶への介入を始める。初めだけ少し気持ち悪いかもしれないけど、気にしないで。瞼の裏に浮かぶ映像だけに集中するんだ」
「うん」

 深呼吸。そして、深呼吸。
 急に頭が重くなって、首で支えられなくなった。
 意識がにごり始めて遠く細くなる。
 頭の奥から何かが忍び込んでくる。

(――ト……って?――)

 ジャンの声。
 直接聞こえたその声に思わず頭を上げると、ヒフミの手がそれを下げた。

「今ここで起きていることじゃない」

 信じられなかった。
 だって、傍でジャンの声が聞こえるんだ。
 そう言いたかったけど、目の前に鮮やかな風景が現れて、何も言えなくなってしまった。



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