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「そこが難しいとこなんだけど、僕にはないよ。僕だけじゃない、ソルの大半は司っているものが不特定なんだ。なぜかっていうと僕を含め、ソルの大半は混血で、混血はそれを司る資格がないから。
司るものがある――それは、その人が由緒正しい純血の家柄だっていうことと同じ意味だ」
ヒフミは続ける。
純血は、その血統を継ぐ者が、ただ純血の子どもが生まれるのを祈って待つことによってしか守られない。そしてその子どもが生まれないということは、家が途絶えるということ。
「そんなワケで純血の家っていうのは、昔っからドロッドロの愛憎劇が――って、子どもに教えるようなことじゃないな」
ヒフミが息をつく。
「さて時間も押してることだし、そろそろ始めようか」
「なにを?」
「記人の術を使う。ランクの低いハルトには使えないけど、僕たちくらいになると体験した出来事を他者に“そのまま”伝えることができるのさ。
例えば今朝の話なんてどうだろう?」
「それって……」
「僕の記録を見せてあげる」
ヒフミはシュクルの右横に立つと、左手を後頭部に、右手を左の側頭に当てた。
「目を閉じて」
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