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〜8話〜



何が何だか、分からなかった。
いきなり刃物を向けられて、死ぬかと思った。
この世界は、そう言う場所なんだ。実感した。



「ええ加減にせぇや!!」

怒鳴り声と共に、ズシンと重く地面に響く音。
どうやらオシがヒヨに平手打ちをして、それでヒヨが倒れたらしい。

「相変わらず、頭に血ぃ昇んと駄目やなお前!!」

……相変わらず?

「オシ、ヒヨとは古い知り合いなのか?」

俺も感じた疑問を、真っ先にナギが聞いてくれた。
問い掛けられたオシは、叩いた手の平を見ながら、呆然としている。

「あ、れ?何で相変わらず、とか言うたんやろ?俺も知らん」

確かに、向こうでは彼らは知り合いだ。先輩と後輩。
どのくらい親しいかまでは知らないけど…。
でもここでもそうとは限らないだろう、いくら何でも。

「………ヒヨ。魔王に立ち向かうためには、いくら戦士と言えど束でかからな勝てる見込みはあらへん。分かるやろ?」
「っ………けど、俺にはあの人が力になるとは思えませんけどね!!」

そう言って、透けた髪から覗くヒヨの瞳は俺を睨む。
………分かっている、俺だって。
端から見て、3人の間の空気が緊迫していた。
武器を構えて、一触即発な状態。
そんな中……俺は怖じ気付いて、全く体が動かなかった。

「……確かに、サエは特殊な戦士だ。戦士の力の要となる憎しみが無い。そもそも、この世界の人間ではない」

淡々と告げるナギの言葉に、目を見開き視線を移すヒヨ。
驚くのも当然だ。いきなり別の世界とか言われて、しっくり来る訳無い。
俺だって正直、今でもよく分かってないし。

「彼は、帝王が言うには…世界の神によってこちらに引き寄せられたそうだ」
「そんな奴が戦士?はっ……冗談じゃない」

ヒヨの敵意が、更に増した。
それでいて呆れた、と言うように刀を地面に投げ捨てた。
これにはナギもオシも、目を丸くする。

「殺す価値すらない」

そう零してヒヨは刀を拾い、背を向けて歩き出す。
怒鳴るように『ヒヨ!』と声を掛けるオシすら無視をして。
闇へと、消えて行く。

「サエ、取り敢えず放って置こう」

軽く舌打ちをして、ヒヨを早足に追い掛けるオシ。
どうしたら良いか分からず、呆然と立ち尽くす俺の肩を掴んで、ナギが言った。

「うん…」

酷く疲れた。
俺は、ナギの言葉に小さく頷くことしか出来なかった。



END..



(六角戦士・サエ)

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