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〜序章〜



俺は帝王。
揺るがぬ帝王。
魔王の、対に当たる者。
神に選ばれし者。

そして……神に選ばれなかった者。



「………戦士(プレイヤー)になると言うことは、簡単に言えば自分自身と言う存在をこの世から抹消することだ。それでも、お前はこの力が欲しいか?」

怒りを露にする奴に、俺は何度同じ台詞を吐いただろうか。
自分を知る者全ての記憶から消され、始めから存在しなかったことになる。
それに対し、何も感じぬ愚か者達に。

『ああ、構わない。俺に……失うものなどもう何もない』
『ええんよ。………これが、俺への戒めやから』
『あの日、俺は何も出来なかった。だから構わない』
『人助け……なんぞ柄じゃないがのぅ、良いんじゃよ。この身くらい、神に捧げちゃる』
『私で力になれるのなら、そんなものくらい…いくらでも消して下さい』

ああ、なんて陳腐な。
揃いも揃って、似たようなことしか言わない。
全くもってつまらない。復讐なんて言葉は。

「え!?そんなのやだし!何で自分を捨てなきゃなんねーんだよ!良いよ、だったらそんな力要らねぇ!!」

今日、初めて今までの奴等とは違う答えが返って来た。
少し赤く充血した瞳にあるのは、紛れもなく怒り。
でもそいつは、他とは少し違った。

「アンタもさ、人任せにするくらいなら自分から動いたら?こんなご立派な屋敷に籠ってないでさ……バカじゃねぇ?」

俺は、思わず笑いが止まらなくなった。
皆…俺を神か何かかと思い込んで、崇める奴ばかりだったから。

「アーン?この俺様にそんな口聞くたぁ、良い度胸だな。………まぁ、せいぜい無能なまま頑張るが良いさ」



異世界からやって来た特別な戦士が居るとか何とか聞いたが、そんな奴よりも俺は、コイツに期待したいと思った。
そう、期待するだけ。



他人に人外なる力を与えられる立場であるながら、自分にその力を与えられない……ある意味選ばれなかった者であるからこそ。

俺には俺の、出来ることをしよう。



END..



(帝王・ケイ)

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