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〜幕間〜



『………面白い』

いつものように退屈で、在り来たりな台詞を吐いたとある復讐者達の身に起きた展開に、少しだけ興味が湧いた。
成程、《こうなるのか》と。



――‐‐

お互いに家族を失いし、まるで兄弟のような少年達はしっかりと手を繋いで、しかし本来子どもがすべきで無い憎悪の籠った瞳を、俺に向けた。

『アイツはっ……俺のおとんとおかんとねーちゃん、そしてっ、若の家族も奪ったんや!絶対許したらアカンっ!!』

独特のイントネーションで話す眼鏡をした黒髪の少年は、そう訴えかける。

『侑士は……俺の、もう1人の兄貴みたいなもんだ…その侑士が、そうしたいって言うなら、俺はそれに付いて行く』

隣の、目が見えない程に前髪を長く伸ばした茶髪の少年は……黒髪と違って冷静に見えるが、所詮中に秘める思いは変わらない。

『………もう一度言う。戦士になれば、二度と元の自分には戻れねぇ。この世から忘れ去られ、魔王を倒すためだけに存在する駒となる。それでも、力を求めるのか?』
『ええんよ。………これが、俺への戒めやから。ちゅーか、元々もう…俺らを知る奴なんか居らんやろうからな』
『あの日、俺は何も出来なかった。だから構わない………今度こそ、力になるんだ』

何を言っても揺るがないっつーのは分かってるが、つい何度も確認しちまう。
後から文句言われても、困るからな。

『後悔すんじゃねーぞ?』

最後に一言だけ零して、俺は力を解放した。



‐‐――

『気分はどーだ?天才戦士・オシ、そして下剋上戦士・ヒヨ』

目が眩む程の光に包まれ、新たな名前を授かり、戦士となった者達は……復讐の要となる感情は忘れないが。

『………アンタ、誰や?』
『そっちこそ。誰だよ』

要の感情を引き出す対象が戦士となった場合、その存在を忘れてしまうようだ。

『てめーらは……そうだな、一応、仲間だな』
『はぁ、仲間ぁ!?こないな目付き悪い奴と、上手くやれる自信無いわ…』
『それはこっちの台詞だ。こんな胡散臭そうな奴と、手を結ぶ理由が分からない』

力を欲さなければ、更に大切な者を失わずに済んだと言うのに。バカだな。
あまりに滑稽過ぎて、笑うことさえ出来なかった。

『とにかく、もう後戻りは不可能だ。突っ走れ、戦士として』
『帝王さんに言われんでも、そのつもりや。俺はアイツ………そう、アイツのために、やらなアカンのや』
『俺だって。兄貴の敵討ち、そしてもう1人の………ために、魔王を倒す』

互いに口にする、漠然と記憶に残る者のためにと。
目の前に居ることももう思い出せず、けれども目指す先は同じ。
共に、歩くことになる。



『………しかし復讐のための力の代償は、やはり生半可では済まない訳か…』

憐れな2人組が屋敷を去り、言葉が溜息と共に零れた。
友情ごっこも許されない、悲しい悲しい復讐の駒達。
ざまぁみろと嘲笑いながらも、同情するのは……きっと、嫉妬。



これはとある2人の戦士が、力を手にしたときの過去話。



END..



(帝王・ケイ)

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