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〜4話〜



現実味の無い世界。
魔王、戦士……聞き覚えはあれど、聞き慣れない言葉が普通に飛び交う世界。
俺の知る人物達が、全く別の人間として生きてる世界。
俺だけが、異物な世界。



「………1つだけ、聞いて良いか?サエ」

ずっと無言を貫いていたナギが、漸く口を開く。
俺が小さく良いよ、と答えれば、ナギはゆっくりと言葉を繋げた。

「お前は、魔王を……知っているのか?」
「……知っていると言えば知っているし、知らないと言えば知らない」

ナギも、頭が良い。
俺の言いたいことを、直ぐに察してくれたようだ。

「君や、ケイに会って殆ど確信した。君達は…俺の居た世界の知り合いに、よく似てる。外見だけなら、同一人物と言っても過言じゃないと思う」
「つまり……魔王の特徴に当てはまる人物が、サエの世界に知り合いとして居る…と言うことか?」
「うん。本人を見てみない限り確実では無いけど、ほぼそうだと思う」
「………そうか」

そう言って、ナギは何処からか取り出したノートに、サラサラと何かを書き出している。

「もしも、彼が本当に魔王なのであれば……俺は、彼と戦うよ」

他の人物だったなら、きっとこんな気持ちにはならなかった。
俺がよく知る人物に似た彼だからこそ、俺は、止めなければと…思う。

「まぁ、こちらとしては…強大な魔王に立ち向かうためにも、多くの力が必要なところ。サエがやる気になったのなら、理由は何であれ、構わない」

ナギは、サッパリした性格だなぁ…と思った。
相手に深く踏み込む様子もなく、しかし決して拒絶では無い。
適度な距離で接して来る。

「うん………宜しく、ナギ」
「さて、そろそろ日も暮れる。急ぐぞサエ」

さり気なく握手を求めてみたけど、やっぱりナギは、それをとても自然に拒否した。



‐‐――

「……ここは、『I』と呼ばれる地区だ。この世界は幾つかの地区に分かれていて、その地区の住人以外は、入る際に身分証明を求められる」

そう言って、ナギが俺にカードを手渡す。
『六角戦士・サエ』と大きく書かれたカードを、入口に居た警備員みたいな人に見せれば、不気味なくらい満面の笑みを浮かべて…俺達を門の中に入れてくれた。

「このI地区に、他の戦士が住んでいるとの情報を得てな。向かう途中にお前に会った」

寡黙だったナギが、少し饒舌になったような気がした。
別に聞いてもいないのに、情報の出所や他の戦士の特徴等を語っている。

「サエ。彼等に、当てはあるか?」

一気に言い終えて、一息付いたナギが俺に問う。
そうか、ナギが俺に語った理由の1つは……それか。

「ある」

俺が短く答えると、ナギは穏やかに笑った。



END..



(六角戦士・サエ)

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あきゅろす。
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