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〜2話〜



いくら人外なる力を手に入れたところで、魔王はそれの何倍も巨大な力を持ち合わせている。
帝王・ケイは、こう言った。

『お前は、情報収集が得意と言う長所がある。記録戦士に由来するとこだ。お前はそれを使って、仲間を集めろ』

当然のことだが、この世界には俺と同じく戦士となったものは……少数ながら居る。
何故この状況下の中で、戦士になった者が少数なのか?理由は1つ。
やはり、自分と言う存在を失うことが……怖いのだ。

『ナギ。てめーにだけは教えといてやる、神からのお告げだ』
『お告げ?』
『………てめーら戦士の中に、1人だけ異世界からやって来た特別な戦士が居るらしい』
『異世界から?流石は神だな、ここ以外の世界があると言うのは俄かに信じ難いが…』
『特殊も特殊だ、俺はそいつに会ったことが無い。しかし既に戦士だそうだ』
『何?戦士の力を与えられるのはお前のみでは無いのか?帝王』
『………ああ。だがそいつはこの世界にやって来たときから戦士であり、更に己を忘れていないそうだ』

有り得ない話ばかりだ。
異世界人、帝王の力無しで戦士の能力を授かる。
そして、俺達が戦士になる上で最も恐れている……自分を失うことも無く。
まさに、神に選ばれし戦士と言う表現が相応しい。

『その戦士の名前……一応本名は伏せて置くか。戦士名は、六角戦士・サエ。容姿は茶髪で二枚目だ』
『………分かった。見付けたら、一度ここに連れて来た方が良いか?』
『そうだな、頼む。異世界の奴だ、この世界のことを何も分かっちゃいねーだろうからな』

何もかもが特殊なそのサエと言う人物に、俺は大層惹かれていた。
とにかく戦士として例外な箇所が多い。
少しでも早くその者と出会い、そして多くの情報を得たい…と思った。
ああ、そんな感情に対して…何処となく懐かしさを感じる。
記録戦士の由来。これが、俺と言う存在を示していたものであると、体で実感した。



‐‐――

「…………えっと…」
「『確か君は、何とかかんとかナギだったよね?』と、お前は言う」
「え!?何で分かったの!?」
「………何となく、な」

サエと言う男、想像していたよりも明るく、無邪気だ。
いや……自分の使命を理解していないからこそ、この無邪気さを保てるのだろう。
確かにコイツは、現状を全く理解していない様子だ。

「君の名前、思い出したんだよ。ずっと出て来なかったんだけど」

そう言われて、俺はサエをじっと見た。
何だろうか、とてつもなく嫌な予感がする。

「君の名前は、柳れ…
「言うな!!!!!」

サエもだが、俺も大層驚いた。
普段あまり出さないような大声を出し、更に俺はサエの首を両手で押さえ付けていた。
嫌な汗が頬を伝い、呼吸も苦しい。

「………すまない」
「あ、いや、こちらこそ…」

慌ててサエの首から手を離す。
何故、こんなにも動揺し体が反射的に動いたのか。
……分かっている。サエの言おうとしたことは、戦士となった俺が…絶対に聞いてはならないものだったのだ。
その証拠に、サエが言い掛けた言葉の……1文字すらも、俺の記憶からは抹消された。

「……さっき言ってた、魔王を倒すってことについて…聞いても良いかな?」
「………それなら、この屋敷の主に聞くと良い」

目の前にそびえ立つ屋敷に、サエは息を呑んだ。

「帝王・ケイの屋敷。彼なら、君の疑問全てに答えられるだろう」

そして遂に帝王・ケイと、六角戦士・サエの初対面の時がやって来た。



END..



(記録戦士・ナギ)

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