〜1話〜
ここは一体、何処なんだろうか。
俺は教室に居た筈だ。
そこで自分の席に着いて、そうだ、数学の授業を受けていた。
なのに…今、俺の目の前に広がる風景は、見渡す限り砂漠。何もない砂漠。
「………夢かなぁ…痛っ!」
夢かどうか確かめるのに有りがちな、自分の頬をつねってみた。
痛い。夢は痛覚を感じないと言うけれど、普通に痛い。
それとも、夢では痛みを感じないって言うのが嘘なのかもしれない。
じゃなきゃこんな状況、訳が分からない。
「………どうしよう」
日差しが、熱い。
このままだと本当に照り焼きになってしまう気がする。
だけど、何処に視線をやっても砂漠しか無くて、どうやって歩くべきか全く検討が付かなかった。
それでも、立ち止まっていたって状況が変わる筈も無い。
取り敢えず前に向かって、歩き出した。
ザクザク
歩く度、足が柔らかい砂の中に深く埋まる。
しかし長靴のようなものを履いているからか、砂が中に入ることは無い。
とは言え、歩きづらいのに代わりは無いし、そのせいで普通に歩くよりも体力を消費する。
はっきり言って、疲れた。
俺はあまりの疲労に、その場に座り込んでしまった。
歩いても歩いても景色は変わらなくて、いい加減嫌になって来た。
となると…経験は無くとも、これから自分がどうなるかは想像が付く。
一度無くしたやる気は二度と戻らない。
このまま、ここで死んで行くんだろう。
「暑い…」と言う呟きは声になることなく。
俺は、倒れ込んだ。
‐‐――
バシャッ
「うわっ!?」
顔に水が掛かった勢いで、目が覚めた。
…………水?
「気が付いたか」
何と、俺の目の前に人が居る。
しかも…ちょっと奇抜な格好をしているところを除けば、俺は彼に見覚えがあった。
「君、立海の……」
「立海?何だそれは?」
………名前出て来ないけど。
でも、目の前の彼は確かに立海のテニス部の1人の筈なのに、『立海』と言う言葉を聞いても本当に不思議そうに首を傾げている。
「………俺の名は、記録戦士・ナギだ」
「きろくぷれいやーなぎ?変わった名前だね?」
「ああ。俺は戦士だからな」
さっきから全く会話が噛み合わない。
そもそも場所も彼の格好も変なのだから、噛み合わないのは仕方ないのかもしれない。
そんな風に解釈出来た俺が、何だか可笑しかった。
「………もしかして、お前が異世界からやって来た戦士なのか?」
そう言って、ナギと名乗った人物は1人納得した顔をして、俺の手を引いて歩き出した。
「そうか。ならば、きちんと1から説明をしなければ分からなかったか…すまない」
「ええ?あ、うん…?」
すっ、と。
ナギが細目をゆっくりと開き、俺をしっかりと見据えて言った。
「……お前は、この世界の魔王を倒すために呼ばれた異色の戦士。六角戦士・サエだ」
それだけ言って、ナギはまた歩き出す。
何が何だか、俺にはさっぱり分からないまま。
魔王?倒す?
取り敢えず……このまま照り焼きになって、餓死する心配は無くなったけど。
色々と面倒なことになりそうな気がして、憂鬱だ。
END..
(六角戦士・サエ)
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