中編
02
午前中に終わった学校帰りは寄り道をせずにそのまま帰宅したが、今の時間にログインしてもリョウさんは居ない。
仕事終わるのは夜だし平日だし、夜はカメが居るしで嬉しいんだか寂しいんだか、どちらの感情も一緒に居て相性悪いくせに居座っている。
毎日ログインして会話しているのもあって、とりあえずメッセージだけでもとパソコンを開いた。
「……ん」
ゲームにログインしてマイページからメッセージ画面を開くと、未読通知が来ている。開くとリョウさんからで、受信は朝だった。
今日は何時から居るよ───というメッセージは良く来るから珍しくもないので躊躇いなく開いて目を通すと、やはりというかいつもの内容だった。
寂しさとか申し訳なくもありながら返信に文字を打ち込む。
「……明日はちゃんと入れるはず」
課題は夕方までしかやらないし早く終わらせればその分沢山入れるんだから、と色々考えながら打っていたが、ふと我に帰った。
なんでこんなに寂しさとか思ってんだろ。鬱憤を吐きたいから、というのは一理あるだろうが、それでもここまではっきりとした気持ちは無かった。
もちろんゲームが出来ない日だって何度もあったし今さらになってこんなこと考えてるのは何故なのか。
リョウさんは確かに好きだけど、カメに対する感情とは違う。
それとも惚れやすいとか?
「いやいや」
声には惚れるけど。世間話だとか個人的な事をお互いに結構話をしていても、実際に会ったことも見たこともない人をそうそう好きになるか?
ネット恋愛とかよく聞くけど、カメが好きだって感情があるのに他も同時に恋愛感情って抱けんのか?
不可解な自分の心中に自問自答を繰り返しても、やっぱり分からないままだった。
カメが来たら確かめよう、と勝手に決めて、幼馴染みが泊まりにくるからゲームが出来ないというメッセージを簡潔に打って送った。
「───あー…頭パンクするー」
「この時間で一教科出来りゃ上等だろ。終わり」
「やったー! お腹すいた」
向かい側でベッドに引っくり返ったカメに呆れたが、何だかんだ集中してたらほぼ無心でひとつの課題を片付けていたらしく、時計はもう18時を過ぎていた。
カメが来たのはリョウさんにメッセージを送って少し経った後で、それから休憩を挟みつつではあったがカメにしてはかなり頑張った。
「アイス買いに行くか?」
「行く!」
体を伸ばして問うと、カメはだらけていたのが嘘のようにパッと立ち上がった。
こういう所が可愛いと思うのは、俺の欲目のせいだろうか。
頑張った褒美に奢る、という俺の言葉にカメはキラキラと目を輝かせて背中に抱きついてきた。
「みーくん愛してる!」
「あっぶねぇしその呼び方するなら奢らねぇし寧ろ奢らせんぞ」
「めっちゃ早口。よく噛まないね」
焦ったんだよクソ野郎。
心中で悪態を吐きながらカメを剥がして部屋から出る。
もう少しで親も帰って来るしついでに二人の分も買うか、と玄関でサンダルを引っ掛けた。
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