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中編
生徒会長の未遂。‐1
 


 ───この学園に通う生徒の家は殆どが金持ちで、金銭や物資に不自由なく暮らしてきている。だからこの学園にも在籍出来る。それは最低限の家柄でも変わらない。

 俺は、その最低ランクの更に下にいた。
 恵まれた環境ではあったし、貧乏というわけではないが、高級で質の良いものだけで生活する事は出来ないし、したくない。
 金持ちの価値観で粗悪と言われるものでも、良いものは沢山あるのだ。その質素と言われる生活が好きだったのもある。
 けれど、学園に入ると中流だというだけで悪い意味を含み注目される。

 最初はその視線を変えてやろうと思った。

 成績だけは、学園で上位に居続けることが出来た。でもそれだけでは意味がない。
 知ってほしかった。生徒を学園を知れば知るほど、自分達の下で誰がどんな生活をしているのか、どんなものがあるのか。
 自分の手で何かを作るということや、苦労や努力は金持ちだってやっている。知っているけれど、でもそれは、金持ちレベルのものでしかないのだと。


 彼らには彼らの、他人には他人の、苦労や努力があるのだと、その楽しさを、面白さを、価値を、知ってほしかった。
 お金が掛からないから悪いのではない。お金が掛かるから良いのではない。
 共感しなくていい。好きにならなくていい。ただ知ってほしい。
 生徒会長に指名されてから、生徒会長として認められて、それからもずっと止まることは許されないと思った。
 止まったら意味がない。たまには止まることも必要だったけれど、ずっとそこには居られない。


 笑ってくれたら、いいな、と。
 自分の努力で、彼らが楽しそうに過ごしてくれたのを見たとき、別の世界を知ってほしい、という気持ちより、沢山笑ってほしい、という気持ちに変わっていった。

 原動力だった。

 俺は、我慢することに慣れていた。この学園にくる前から、何かを我慢することは当たり前にあったもので、疑う理由もなかった。
 我慢という概念も薄かった。
 欲望のまま好き勝手やっている姿を見ていると、生徒から我慢強いと言われるほど、俺は生徒がとても純粋に見えた。
 我慢する、という事のレベルの違いも見せつけられたからかもしれない。
 実際は純粋とはいえなかったけれど。
 




 ───笑ってくれる。楽しいと言ってくれる。知りたいと聞いてきてくれる事が嬉しかった。

 俺は、王様なんかじゃない。
 気安く話しかけられないような、そんな高貴な存在じゃない。だから、自分から沢山話しかけた。そしたらいつの間にか、周りは崇拝者ではなくただの高校生になっていた。


 歴代の生徒会長が雲の上の存在であると錯覚させたのは、一緒に遊ぶという単純な事が出来なかったからだと、大勢の生徒と話すほどそう思った。
 様呼びなどしてるから高貴だと錯覚するのだと。今までの役職者や見目のよい生徒たちはそうやって祭り上げられ、勝手に孤立させられてしまっていて、それが当たり前の風習になっていたのだ。
 豪華な椅子に縛り付けられて、遊び踊る姿を羨望の眼差しで見ているだけは嫌だった。だって、まだ遊び盛りなのだから。

 俺たちは、なにに優れていようとただの高校生で、一般の高校生のようにふざけたり遊んだりするのは悪いことじゃない。
 同時に高校生であることは、社会への一歩を踏み出していて、常識やモラルを身に付けて応用していって、そこから彼らは人の上に立つ存在になる。
 両立していく、という本当の意味を理解して、要領よくこなしていく。
 一般生徒も、役職を持つ生徒もそれは変わらないことだと思っていた。
 それが出来ていると、自分よりも要領よくこなしていると思っていた。


 

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