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中編
◆思考回路が停止しました。
 

 こんなプライベートで会えるなんて、しかも相手からの誘いとか、俺の緊張はまさにピークを平行中である。


 急いで準備を済ませ、携帯を手にした瞬間に電話が来て慌てて出ると、驚いたような声に聞こえて少し笑ってしまった。
 それからまだ急いで部屋を出て、なぜか走って近くのパーキングまで行ってしまったのだけど、車と彼の姿を見た瞬間、走ったからではない別の高鳴りが俺を攻撃してきた。
 初めて見る私服。黒のパンツにシャツとジャケットを見事に着こなしたその姿に、思わず見惚れたのは仕方ないと思う。

 それから車に乗せてもらい(しかも助手席!)、たまにチラと見る運転している姿があまりに格好よくて、イイ歳した男のくせに乙女のようなドキドキに満たされて心中はまさに嵐だった。


 会話だってうまく受け答えが出来なくて、どうしたらいいのか分からない。


 そんな中で車は、下町風情ある道に入ってパーキングで停まり、歩いて辿り着いたのは落ち着いた雰囲気の懐かしさが漂う喫茶店。
 たまに息抜きに来るのだと彼は笑い、その笑顔に昔の面影を見つけてしまった俺は、さらに激しい動悸に襲われてしまったけれど。



 奥まった席で、彼がオススメだというオムライスに決めて周りを見ているとき、ふと視線を感じて顔を向けると、なぜか倉科さんが無言で俺を見ていた。
 子供っぽかったかも、と羞恥に苛まれてしまい思わず謝ると、気にするなと返ってきた。が、俯いてしまっても分かるほど、かなりの視線が突き刺さった。


 オムライスはとても美味しい。
 でもおかしい。何かがおかしい。
 同窓会のアレから、何かがおかしい。


 そう思いながらも、当たり障りのない会話を挟みつつ食事を終え、コーヒーも二杯目になった時だった。



「…昨日のことだけど」
「……っ」



 ついに来てしまった、と俺は何故か少し恐怖を抱いた。
 何を言われるんだろう。ふざけていたわけではない、とは電話で聞いたけれど、酔っていたとは言わなかったし、彼はしっかり覚えている。
 忘れていてほしかった反面、覚えていた事で真相を知れるという期待反面で、俺は向かいに目を向けた。


 倉科さんは視線こそ動いていたが、言いづらそうに、何故かちょっと照れ臭そうにしていて、首を傾げる。



「…なんというか、理性が切れたというか」
「……はい?」



 しかし彼から発せられたのは、予想外の言葉で。
 ていうか理性が切れたってなんのことだ。

 意味が分からず見ていると、さ迷っていた倉科さんの目がばっちりと合い、その目の真っ直ぐさに鼓動が高鳴る。



「あー…んー…、説明しづれえな…」
「……」



 荒れた口調にまたドキリ。
 普段は仕事中なので、丁寧な口調に慣れてしまっていたのもあるけれど、その素の部分にまた切なくなる。
 ぐしゃりと髪を混ぜる姿すらも、俺には毒だ。


 格好いいという言葉しか浮かんでこないとか、末期だな。


 自分に呆れてしまいながらも、次の言葉を待つしかなくて。
 そして意を決したように息を吐き出した倉科さんの言葉に、俺は逆に息が止まった。




「あー…もういいや、よし。……なんかお前見てるとかわいくて苛めたくなるんだ」

「───…っ!!?」



 だ れ か 解 説 し て く だ さ い。


 

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あきゅろす。
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