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中編
◇内側を占める、その中心。
 

 朝、出勤して喫煙室に居ると、佐東が入って来たのを見て片手を上げる。
 会社内の喫煙室の中で一番奥まった場所にあるここは、ほとんど利用者がいないため高確率で佐東と二人になるから気軽に会話するには持ってこいな場所だ。

 太い鉄柵に寄りかかっていた俺は、隣で同じように体を凭れさせて煙草を一息二息吐き出すと、徐にスーツのポケットから畳まれたハガキを取り出し、横目でひらひらと揺らしたのを見て、苦笑した。



「持ってきたのか」
「朝出た時にポスト見てそのままな。お前んとこにも来たか?」
「ああ」



 苦笑を返した佐東はそれをポケットに戻すと、何か聞きたそうな顔で俺を見てくる。
 なんとなく言いたいことは分かる。



「3連休初日に当てるとは流石だよなぁ、三坂も」
「しこたま飲みたいからだろ」



 ほぼ一ヶ月後の翌月3連休前日の日付が記載されたハガキの差出人は、その催しの幹事であり中学時代の友人の三坂だった。
 何かとイベントが好きだった彼は、中学時代、文化祭などに率先してアイデアを出し生徒を引っ張ってきた。楽しいことが好きで勉強が苦手な、まあ、愛されるアホという分類の人間だ。

 この歳になってもそれは変わらないようで、ハガキには手書きで「絶対参加希望」という願いなんだか強制なんだか分からない言葉が書かれていたのを思い出す。



 昨夜帰宅した際にポストにあった一枚のハガキは、中学の同窓会をしようという懐かしい気持ちになる内容だった。


 中学で同じだった奴らが、高校で別になるのは珍しくはない。
 高校は高校で同窓会を考えているのだろうが、特に三坂は中学の途中で引っ越したのもあって遠い高校に進学してしまったために疎遠状態の中学時代に仲良しだった親友と会うための企画でもあるんだろう。

 他人に勘違いされやすいほど距離が近かった覚えがあるくらいには、仲良しだったはずだ。



「来週末までには出しとかないとなぁ」
「ああ」



 連休は特に先立つ予定は無かったはずだから出席で出すかな。そんなことを言う佐東を横に、俺は結構悩んでいた。

 期待と予想があるのだ。
 来てくれるだろうか、いや来ないかもしれない、というなんともまあ、本当に個人的なものだが。
 しかし佐東が行くとなれば必然、引っ張り出されるのが目に見えていた。


 仕事するかー、と気の抜けるような言葉を聞きながら、灰皿に短くなった煙草を落として共に喫煙室を出た。










 ───帰宅後、ポストに投函されていた高校の同窓会開催のハガキの日付を見て、俺は更に悩むことになった。



「……まじか」



 テーブルに置いた、二枚のハガキ。
 どちらも似たような書体で遊び心のあるそれは、中学の同窓会を企画した三坂と、高校の同窓会を企画した原田という友人のもの。

 原田は高校からだが、それなりに親しくしていた。三坂と似たようなタイプの、こちらは愛されるバカだ。



 その同窓会開催の日付は、翌日3連休の前日。中学の同窓会と同日だった。
 中学から同じ高校に進学した生徒なら、比較的高校の同窓会への出席率のが高いかもしれない。
 場所が近いから、時間を見てどちらも出席する、なんて奴もいるだろう。
 高校の友人は中学よりも深く繋がる可能性が高いけれど、懐かしむなら中学ってか。



「……はぁ」



 さて、彼が出席するかも分からない中学か、親交のある友人が多かった高校か。はたまた両方か。
 いやいや、中学から高校も同じだった奴らだっているし、たぶん高校の方だけに行く奴が大半だろう。そう考えると三坂が可哀想になってくるな。


 その晩、俺は今までにないくらい個人的な事でひたすら悩んだ。


 


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