中編
心中大錯乱。(第二波)
するりと頬を撫でられ、俺はただ目を見開く事しか出来ずにいた。
だって声を出したらバレてしまう。聞こえてしまう。本当は、叫びたいくらいなのに。
驚愕の眼差しを宇佐見に向けていると、宇佐見の口元がゆっくりと動く。
一言、一言、動く。
“ あ、つ、い "
「〜〜っ!!」
その言葉を理解した瞬間、カッと熱が急上昇してきて、ぱっとその右手を押さえるように掴む。
骨張っていて、綺麗だと思った手に。
そのまま力を込めて頭を横に振る。
理由はない。嬉しいけど、嬉しいけど、戸惑いが大きくて。
けど、宇佐見は淡々と大森に返事をしながら右手を滑らかに動かして俺の左手を取り、そのまま、ぐりぐりと指で俺の手をいじり出した。
いやいやいや、ちょ、待ってください宇佐見さん。
その手と宇佐見の目を交互に見ても、その目は自分の右手と俺の左手を見ている。
するりと、指の間に宇佐見の指が入ってきて、その感覚がくすぐったくて、一瞬手が震えた。
一本一本を撫でるようなそれは、なんか、こう、ちょっとエロいんですけどなにしてんですか、ねえ。
「…っ、…っ」
でも声が出せない。
居た堪れない。
今尚続く、大森との通話。
ほぼ大森の一方通行だけど。てか長くない?
もしかしてコレ、電話終わるまで続くの。退屈しのぎなの。俺いま、羞恥で死ねるよ?
なんて、ドキドキし過ぎて苦しくて、か細く息を吐き出したとき。
またゆっくりと、弄られていた手が持ち上げられる感覚に目を向けると、その先にあるものに、俺は、頭が爆発するかと思った。
まって。まって、まってなにしてんの!?
ちょちょ、なんで。なんで、指、口…!!
宇佐見の唇に、俺の指先が、触れた。
まるでキスのように、やわらかいそれが。
「〜〜っ、は…っ」
宇佐見が俺を見る。いつもの無表情で、俺の指にキスをしながら。
なんだこれなんだこれ、どうなってんの。
頭の中が掻き乱される。
苦しい。息が上がる。見つめてくる真っ直ぐな目と、挟むように動く唇に、意識が奪われる。
そして、指が、舐められた。
「……っ!!」
その感覚に息を飲む。
されるがままの左手。
俺の右手は、宇佐見の制服を掴んだまま固まってしまった。
未だに大森が理科室の方にいるせいで、バレないようにと意識が戻るから、抵抗出来ない。
抵抗、したくないと思ってる自分もいるけど。
湿って柔らかい感覚。中指に舌が這っている。
ぞくりと背中を走る電気。
これは、腰に、くる。
なんで、宇佐見はこんなこと。
何をしてるの、宇佐見は。
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