中編
友の優しさ。
やっぱり悩み聞いてください。と、走りに走って家の近くまで来たときに、息を乱しながら羽田に言ったら笑われた。
いやいやなんでそこで笑うよ。
とりあえず家に来いと羽田が言うのでお言葉に甘えることにしました。
羽田の家にはよく泊まりに行くから、両親とも仲良しだったりする。気さくだから接しやすい。
家がご近所さんな事もあり、実は羽田とは小学校高学年からの友人なのだ。高学年からなのは、その時羽田家がこっちに引っ越してきたから。
今とあまり変わらない、真面目そうで不真面目さんな羽田は、あんまりクラスメイトと騒ぐような奴じゃなかった。
その時俺は結構大人しそうに見えて動き回るのが好きだったから、転校してきたばっかりん時は全然話さなかったのに、何がきっかけかは忘れたけど、気付いたら話すようになって、家が近いのを知ってからはよく互いの家を行き来してた。
羽田は取っつきづらいと言われてるけど、実際そんなこともない。
ゲームしたら騒ぐし、走り回ったりするし、よく勉強教えてくれたし。羽田はイイ奴だ。意地悪な腹黒だけど。
他人のイメージと違って悩み込むタイプな俺は、よく羽田に相談した。羽田はそれを意外に思うことなく、ちゃんと聞いてくれて、アドバイスだってくれたから、今でもがっつり頼ってる。
だから、大森の衝撃告白について纏まらない頭で聞いてもらうことにした。
羽田に相談すると、考えが纏まりやすくなるから。
羽田家にお邪魔して、両親に挨拶して、突然ながらお泊まりさせて頂きますと言うと、両親とも笑顔で迎えてくれた。嬉しいなあ。
お風呂沸いてるからね、という羽田母の言葉に礼を言って、二階の羽田の部屋に移動する。
「先風呂にするか、汗かいたし」
「うん、いってらっしゃい」
「スウェット着るやつ適当に出しとけよ」
「ありがとー」
風呂に向かう羽田に手を振って、クローゼットの中にある数着のスウェットから一着だけある派手なやつ、うす紫色のを取る。
いつの間にかあったんだけど、たぶん俺用。あいつこんなん着ないし。黒とかグレーとかだし。
なんで紫色あるの、って聞いたら、母親が買ってきたとか言ってた。カラーチョイスが面白いと思う。
下着はここに来る前に買ってきたから大丈夫。
スウェットを抱えて、ベッドに寄り掛かって座り込む。
そして悩む。
なんであんな突然、変態発げ……衝撃告白をしてきたんだろうか。
大森と俺に直接接点はない。
あるとすれば宇佐見や羽田だけど、今まで知らなかったし、羽田もそんな親しくないって言ってた。
宇佐見とは放課後の準備室だけで、他に会って話したりもしなかった。
なのに、殆ど初対面の俺を、大森はずっと見てたって。
一瞬、あの捕食者のような目と、逃がさないと言わんばかりの笑顔が浮かんで咄嗟に頭を振った。
俺が何したのさ。
宇佐見に嫉妬って、そもそも大森が俺を好きとか、冗談にしか聞こえないのに。
『ずーっと、見てたんだよ?』
ずっとって、いつから。
クラスも違う、見たことなかった知らない生徒に、好きだとか見てたんだよって言われて、誰が信じるよ。
誰が喜ぶよ。
俺は、怖いと思った。
それから羽田が戻ってきて声を掛けられるまで、俺はずっと悶悶としてた。
[*←][→#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!