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中編
胸のうち。
 

 残り二回のダンスも好評で、最後には始まる前に既に人だかりが出来るくらいだった。
 クラスメイトの団結力も信頼もレベルアップしたような、むず痒い嬉しさがあって、あの昼前のモヤモヤは、今は息を潜めてる。


 二回目のダンス後は、校庭や体育館ばかりで、宇佐見の居る教室付近には近寄らなかった。羽田はなにも言わない。

 なにやってんだろうな俺、と一人モヤモヤを抱えたまま、楽しむに楽しみ切れなくて、文化祭の終わりを迎えてしまった。



「明日は振り替え休日だし、終わったら打ち上げ行こうぜ!」



 道具の片付けがほとんどない俺達は、委員長の興奮冷めやらぬ声に笑い、欠員なく打ち上げ参加が決まった。
 内気なクラスメイトも今は皆と変わらず、話したことがないヤツらとも楽しそうに話してる。なんか嬉しいね。


 高坂の同伴でファミレスに行くことに決まり、高坂の仕事が終わるまでは、なぜか他のクラスの片付け手伝いをすることになった。
 まあ、暇だしね。


 俺と羽田は、体育館で行われた演劇の大道具の片付けを手伝ってる。
 演劇良かった。高校生らしい笑い中心で、見てる人を飽きさせない工夫もされていて、人気な出し物になってたから。



「悪いね、二人とも手伝わせて」



 演劇をしたクラスの委員長は、半袖を肩まで捲りタオルを首に巻いた土木職スタイルで笑った。
 大丈夫暇だから、と返し、せっせと道具を分解していく。


 ダンスで体力使っても、さすが若さと言うべきか、全然問題ない。なんか俺オヤジ臭いな。



「そろそろ職員会議終わるだろ、ありがとな、助かったよ」
「どーいたしまして。楽しかったよ演劇」
「まじか。良かった」



 じゃあ、と手をふり、途中まででごめんねと加えて羽田と正門前に戻る。
 すでに大体が揃っていて、あとは高坂を待つだけらしい。


 クラスメイトと話していると、正面玄関から怠そうな高坂が出てきた。



「よー、お疲れさん」
「お疲れー」



 俺今だけ子沢山だなー、とかなんとか言いながらも、高坂も満足そうだ。
 学校の最寄り駅近くにある大型のファミレスに、30人近い集団がわらわらと流れ込んできて、でも店員さんは慌てることなく通してくれた。
 どうやら高坂は前以て連絡を入れていたらしい。
 大人だ。と言ったら「馬鹿にしてんのか」と後頭部を叩かれた。痛い。



「校長が各クラスに打ち上げ代渡してくれたが、あんま予算オーバーすんなよー」



 高坂の言葉に、イイコなクラスメイトは「はーい」と返事をして、各テーブルで好き好きにメニューを広げながらの雑談が始まった。

 四人席についた俺は、羽田と委員長と高坂が一緒に座ってる。クラスメイトが座る各テーブルを見渡せる位置だしね。



「あー…腹へった」
「高坂なんかしたの?」
「仕事してんだろーが」
「俺らのが空腹ですけどー」
「はいはい、食え食え」



 なんか年の離れた兄ちゃんみたいだな、と笑いながら、メニューに目を落とす。


 ……宇佐見のクラスも打ち上げしてるんだろうな。


 また、モヤリと鳩尾が落ち込んだ。
 落ち着くといつもこれだ。嫌になるね。



 

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あきゅろす。
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