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中編
兎のウサギ。
 


 俺は思った。
 着ぐるみウエアの宇佐見が見られる…?

 そして反射的に教室内を覗き込むように端から顔を出したら、羽田が笑ったが知るか。
 素早く見回すと最初の予想通りで、着ぐるみウエアの生徒はほとんどが女子だった。男子はあまりいない。裏方とか、着崩した制服だ。



 でも、その中に、いた。



「…〜〜〜っ!!」



 思わず叫びそうになって、口を押さえてしゃがみこんでしまった俺は不審者だ。
 羽田もしゃがみこんでくれたが、笑ってるのがバレバレだ。隠すつもりもないんだろうけど。


 一気に熱が顔に集まるのを自覚しつつ、俺はそろそろとまた端から教室内を覗き込み、目当ての人物を見た。



 真っ白でもこもこした耳の長い兎の着ぐるみウエアを着る、宇佐見がそこにいた。



 可愛すぎて吐きそうになった。叫び声を。
 着ぐるみウエアは大概、つなぎ型で下がサルエルパンツのように股下が広く、足首できゅっと締まって、体格が分かりづらい構造。大きめのフードに、袖も膨らんでいて手首で締まっている。
 そんなウエアの、真っ白な兎のを着た、宇佐見が、いる。
 きちんと被ったフードには垂れ下がる耳。しかもお尻には丸いふわふわした尻尾がついていて、歩く度に両方がぴょこぴょこ揺れて。

 無表情だけど。
 無表情だけど…!
 そこが、また…!!



「……か…可愛すぎて…」
「なんだ死ぬのか」
「いや生きる。…でもマジで叫び声吐きそう……」



 かわいいかわいいかわいいいいいい!!って叫んで抱き締めたい。自分より背が高いとか気にしない。よしよししたい。ぎゅうぅぅってしたい。すりすりしたい。欲望が止まらない。



「……俺、いま、幸せ」
「そりゃよかったな」



 ありがとう羽田。無理やりでも連れてきてくれて。俺、まだ頑張れる。



 ニヤニヤが直らない口を押さえながら、深く息を吐き出して、とにかく兎を着た宇佐見を焼き付けるように擬視した。
 兎かわいい。宇佐見かわいい。やばい俺マジでもう、写真撮りたい。



 でもそれやったら絶対来てることバレる上に変な目で見られるし、近寄られたりしたら抱き着きそうだし俺。悶えて引かれたらやだもん。



「…っし、焼き付けた。羽田、行こー」



 教室内から顔を反らし、すっくと立ち上がる。羽田もゆっくり立ち上がって、入らないのかって聞いてきたけど、頭を横に振った。


 俺、宇佐見しか見ないと思うから。
 目があっても反らさないから。ニヤニヤしちゃうから。いま顔赤いから。


 色んな理由を述べたら、羽田に溜め息吐かれた。ひどい。



「んじゃ、なんか食い物探そーよ」
「そうだな」



 仕方ないな、みたいな苦笑を向けられて、俺はそれに謝るしかなかったけど。
 見れただけでも満足したんだ。あと二回あるダンス頑張るぞーと心中意気込んで歩き出そうとした瞬間、背後から腕を掴まれて思わず飛び上がった。



「うわっ、な…、に…」



 びっくりして振り返って、俺はそのまま硬直した。
 いやするでしょ、目の前にさっき目に焼き付けた無表情のシロウサギがいたら。



 

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