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中編
03
 


 いつもラインなのに珍しい、と思ったのと、着信で気付いた自分の浮かれ具合を自覚しつつ外に出て、中からでも見える位置に立った。


「───…もしもし、」
『あ、まだごめん出先だった?』
「まあ…どうした?」


 こっちの賑やかさが伝わったようで、申し訳なさそうな声がした。でも向こう側も賑やかだからカメも外に居るらしい。


『友達と遊んでたんだけど、帰ってる途中。もう帰ってるかなって』


 出掛けるとは言ったけどそんな早く帰らないだろ、と時計を見たら三時を回っていてちょっとびっくりした。もう三時か。


「いやまだだけど…、いつ帰るかはわかんねぇな」
『あ、そうなんだ。珍しいねー』
「ちょっとな。ウチ来んの?」
『その予定だけど、』
「夕方には親居るから」
『わかったー』


 出掛ける事はあっても俺が何時に帰るか分からないとか今まで殆ど無かったから、カメが不思議に思うのも仕方ない。
 それにしてもなんかちょっと様子が変だなとは思ったが敢えて聞かずに話を進めて、夜はカメが来る又は帰ったら既に居る状態であると頭に入れた。

 視界で亮平さんと目が合い、「じゃあまた」と言うとすんなり返事が来て電話を離した。


「───美咲、一瞬どこ行ったのかと思った」
「ごめんなさい、幼馴染みから電話来て」
「そうなんだ。はいこれ」
「ありがとうございます」


 受け取った安納芋アイスは綺麗な黄色だった。

 カメは最近悩んでいる様子だったからその事で俺に何か言いたいのかもしれないが、なかなか言い出せないのはそれなりに理由があるんだろう。
 しかしながら俺は浮かれているらしい。電話が来るまでカメの事を考えていなかったと気が付いてしまった。
 普段は誰と遊んでてもふとした時にカメに関して何かしら考えたりしていたのに、今日は亮平さんとの会話の中でも風景を見ていても浮かばなくて、目の前で紫色のアイスを舐める人に関してばかりだ。


「そっちどう?紫芋ウマイよ」
「え、あ、……美味しい」
「ちょっと頂戴。交換しよ」
「あ、はい」


 ほんのりした風味と芋の甘さが濃く出ていて、冷たいのに安納芋特有の食感や味をそのまま思い出せるアイスだった。
 差し出された紫色を受け取ると、亮平さんは躊躇いなくアイスを食べて「こっちも旨いな」と気に入った様子だ。


 外で食べるアイスは10月とはいえ山も海も近いからかまあまあ冷える。


「さむっ」
「アイスは冷えたな、車戻ろ」
「そうですね」


 亮平さんは分かっていたのか温かいお茶を買ってきていて、食べ終わった後に然り気無く手渡される。こんなんモテないわけねぇじゃん。
 早く早く、と言いながらも隣から離れない亮平さんは本当にもう、周りの女性が羨まし気に見るのも分かるし声かけたそうにしてるのもよく分かるくらいである。
 凄く簡単に表すと「今の所すべてが本当に格好いい」、以上。


 


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あきゅろす。
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