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中編
担任の教師免許疑惑。
 

 高坂の城と化した資料室で、委員長が言ってた通りに高坂はいつ置いたのか二人掛けのラブソファに本当にふんぞり返ってた。

 俺と羽田を見た高坂は、心底面倒臭そうに眉を寄せて溜め息を吐き出したので、とりあえず俺は高坂の教員免許の有無を疑った。




 資料室の奥にある小さいツードアの冷蔵庫の、冷凍室を漁って勝手にアイスキャンディを食べながら(もちろん高坂は怒ったけど無視した)、俺は高坂の腕を掴んで資料室から引き摺り出すようにグイグイと引っ張る。

 羽田の、「仕事しないとグチグチ言われるぞ」という真顔の発言に、高坂は嫌々ながらもちゃんと歩き出してくれた。
 なんで教師になったんだ高坂。



「見んのなんか三日前くらいで良いだろうがよ」
「教師辞めちまえー」
「俺を養ってくれんならな」
「人間失格」
「羽田ァ…、お前どこの人間評論家だ」



 体育館に向かいながら、高坂を挟んで三人で歩く。
 アイスキャンディはもう無くなって、平たい木の棒を加えてフラフラ揺らす。いやはや、12月にアイスキャンディは、運動した後でも寒いね。


 高坂のアイス好きは年中無休だけど、寒くならないのかと不思議に思う。寒いけどそれが良いんだってなんかマゾな匂いを漂わせる返答が来たときには、ちょっとぞわっとしたけど。



 廊下にはもうあの二人は居なかった。
 名前の知らない生徒たちが賑やかに動き回るのを横目に、さっきのどす黒い嫌な感情をまた感じずに済んで良かったと二人に気付かれないように溜め息を吐いた。



 友達。そりゃ、いるよなあ。
 俺も友達くらい居るし教室では色んなヤツと話す。我ながら社交的な方だし。
 でも宇佐見の事は、俺はやっぱり知らないんだと思い知った。


 理科準備室でしか会わない話さない俺たちにとって人間関係について知らないとか、それは仕方ない事なのかもしれないけど。でもそれはそういう話をしないからだ。
 俺も宇佐見も、身の回りの友達関係について話したことはない。
 それも一方的な俺の身勝手なんだけど、宇佐見の周りにどんな人がいてどんな付き合いなのか知ったら、俺との関係はとんでもなく薄っぺらく小さいものだと、きっとその周りに嫉妬するから。



 でも、もう遅い。
 俺は知ってしまった。あの微笑が向けられる相手が宇佐見にとって当たり前に複数存在すること。
 宇佐見が一人だったとしても俺に違和感なんてなかったけど、やっぱり学校で一人ってつまらないし寂しいと思う。
 結局どう考えても俺基準の思い込みにしかならないんだけど、それでも俺にも誰にでもあるような友達とかそういう人間関係に悪足掻きのように嫉妬するんだ。



 ああ、もう。
 好きすぎる。

 なんで、いつから、こんな風に思い始めたんだろう。


 恋の始まりは突然で、終わりは蓄積された理由があって、なんて。




 俺の恋は、気持ちを忘れるまで、熱が冷めるまで、諦めるまで、一方通行なんだろうけど。


 なんか俺、宇佐見に対して全部一方的だな。なんて今さらか。
 …鬱陶しいとか、思われてたりして。
 そんでまた飲み込まれていく。俺ってこんなマイナス思考だったっけ。


 


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