中編
05
「───僕らはそろそろ寝るよ」
「あんまり遅くならないようにね」
「はーい」
「おやすみ」
暫くパーティゲームを続けた後、両親は揃って寝室に引っ込んだ。時計を見れば0時を回っていて思ったよりも夢中になっていた事を知る。
両親に手を振ったカメは大きな欠伸をかまし、ソファに乗り上げた。
「寝るか?」
「んんー…」
何だかんだ今日は勉強で頭使って疲れたし眠くもなるだろう。風呂も済ませてあるから歯磨きだけでいい。
「片付けとくから先寝てろよ」
「ふぁーい、ありがとー」
腕を伸ばしながら力なく返事をしたカメはそのまま洗面所に向かい、後ろ姿を見送ってゲームの電源を落とした。
片付けを終わらせて歯磨きを済ませ、自分の部屋に戻るとベッドにカメがひっくり返っていた。
「……布団敷けや」
ベッドの隣に畳まれたままの布団があって、十中八九入ってすぐにベッドに倒れ込んだんだろう。
いちいち起こすのも面倒なのでタオルケットを掛けてやり、端に腰掛けて仰向けで寝入る幼馴染みを眺めた。
カメは一度眠りに入ると蹴り落とさないと起きない。生活音や隣で電話してたって起きたことがないくらい熟睡する。
吹き出物もない綺麗な肌に指を滑らせた。つねってみても唸りはするが起きる気配すらもない。図太い。
「……警戒心皆無」
当然と言えば当然だ。
小5からとはいえ、ほぼ毎日一緒に過ごしてきて家じゃ家族同然。男女じゃあるまいし普通は何も意識しない。
俺が普通じゃないから、こうやって近くに居ると触りたくなったり理性を全開にして衝動を抑え込んでいるんだ。
意中の異性が隣で寝ていて耐える男の気持ちってこんな感じなんだろうか。異性じゃなんにも抱かないのにな。
ため息ひとつベッドから離れてパソコンのデスクに向かった。
あいつは俺に恋慕を意識したりしない。それでいい。それが世の中の当たり前になっているんだから、おかしいと言われてしまう同性愛の枠組みの中に入れて辛い思いをさせたくはない。
自分に呆れて深く息を吐き出した。
眠気もなくて気晴らしにとパソコンを起動してゲームにログインすると、メッセージ通知が入っている。送り主はリョウさんからで、受信時間を見てから現在時刻を確かめると十分前だった。
平日はあまり長くやらないはずなんだけど珍しいな。ということはまだ居るんだろうか、という僅かな期待を抱いてメッセージを送ってみると、思ったよりも早く返事が来て柄にもなく素直に嬉しくなった。
ボイチャを繋ぐと少し雑音がした後、『こんばんは』といつもの挨拶が聞こえてそれに返す。
『遅くに珍しいな?』
「リョウさんも、仕事じゃないですか」
『ちょっと眠気がなくてさー』
「俺もです」
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