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中編
04
 


 家に戻ると両親が帰宅していて、リビングから音がした。


「おかえり」
「おかえりなさーい」
「ただいまー」


 両親が同時に返事をして、冷凍庫にアイスを突っ込むとカメは当たり前のように台所に立つ母の隣に行く。


「今日のご飯はなーあに」
「冷製パスター」


 カメが手を洗いながらリズミカルに投げた言葉に対して、母はどこの猫型ロボットだと思わせる返答をしていた。
 茹でたパスタを冷やす為に氷が必要だと、カメはボウルに氷を入れて水を追加している。
 実の息子である俺は邪魔にならないように皿だけ出して、食卓からテレビを眺める父の向かいに座った。


「何買ってきたの?」
「アイス。二人のもある」
「お、ありがとう」


 後で頂きまーす、と落ち着いた声で言った父さんはテレビのCMで流れたショートストーリーに「見たことないやつだ」と呟いた。
 種類が色々あるらしい。





 夕食後は各々風呂を済ませ、アイス片手にゲームをセットするカメと一緒に父が楽しそうにソフトの裏を眺めている。
 自分の部屋でやっても良いけど何故か一緒にゲームがしたいと言い出した母とそれに乗っかった父を加え、四人でパーティゲームをする事になった。


「アイス落ちるぞ」
「んー、」


 セットを終わらせて溶けかけたアイスを慌てて舐めとる様子から目を逸らし、父から受け取ったソフトを入れた。


「夏休み恒例ね」


 父の分のアイスを手にした母が言って隣に座る。ソファの前に胡座で座った俺とカメは、共にアイスを食べきって先にゲームを始めた。

 期間限定のアイスを気に入ったのか、背後でお互いに分け合いながら食べる声が聞こえて我が両親ながら仲良しだなと染々思う。
 こういう親だから今の自分で居られるんだな。片想いが辛かろうとも、ゲイである事実を否定して苦しまずに居られる。

 親がアイスを食べている間は暇なので、ミニゲームだけ二人でひたすらやっていた。


「───あっ!ちょっとみーくん強すぎない?」
「お前が下手すぎる」
「そんな事無いと思いますー」
「どれ、僕がやってみようか」
「えっ」
「マジで!パパ交代!」
「ふざけんなナシだろそれ」


 ミニゲームに負け続けるカメを見て、その後ろにいた父がコントローラを受け取った。
 実のところ父はゲームがめちゃくちゃ強い。正直、一対一のミニゲームをやると本当に勝てないから困るし敵にまわしたくない。
 案の定俺は次のミニゲームであっさり負けた。どんなタイプのゲームが来ようとも父が参加した途端に惨敗である。本当に勘弁してほしい。


「くっそ、たまにしかやらないくせに何でそんな強いんだよ!」
「すげー」
「やり方さえ分かれば出来るもんさ」


 そういや父は基本的にやれば何でも出来る人だった。職人系だとか自分の能力以上の事は無理でも、大抵の事は器用にこなしてしまえる。
 ゲームなら尚更、攻略法さえ知ってしまえば無敵に近い。だから対戦系とか本当に気持ち良いくらいにこっちが負ける。

 そのあとは母が加わり、ミニゲームの惨敗続きからは逃れる事が出来た。


 


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