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中編
03
 


 アイスはコンビニよりバイト先のドラッグストアの方が安売りなので、近場だし勉強疲れの気晴らしに散歩がてらそっちに赴き、涼しい店内に入るとカメが「天国」とぼやきながら早足にアイスコーナーへ向かった。


「どれにしよっかなー。羽田の両親様は何が好きなの?」
「両親様ってなんだ。 限定には弱いな」
「あ、じゃあこれとか」
「良いんじゃね?」
「羽田は?」
「自分の選べよ」
「はーい」


 カメが俺の両親を好きなのはよく知っているが、自分の好みを選ぶより二人を優先する優しさは、「好きだな」と改めて思わせる。
 ケースを覗き込む後ろ姿を眺め、ふと周りを見回すとバイト中の先輩と目が合って手を振るそれに返した。
 そのすぐ横で見慣れた大学生くらいの常連さんが店に入ってくる横顔を見つけた。


「これにする! 羽田?」
「、あ?」
「決まったよ」
「おー」


 三つのアイスを手にしたカメに、追加で適当に拾ってそこに乗せた。


「バランスがー」
「がんば」
「雑!」


 レジに向かいながら視界に入った値引きされてる煎餅とお茶を取り、隣でアイスタワーと戦うアホを見た。


「カメはなんかいる?」
「んー…炭酸飲みたい」
「炭酸な」
「それ炭酸水!しかもノンシュガー!」
「母さんが柚子蜂蜜漬けてるけど」
「炭酸水でー」


 あっさり意見を変えた正直者に笑いながら炭酸水を取ってレジに持っていくと、先輩が担当だった。


「夏休み初日から楽しそうだなー」
「お疲れさまです。さっきまで課題してました」
「そーいや去年もそうだった」


 後半はバイトがっつりだな!と良い笑顔で言った先輩に「週6は勘弁です」と笑い返して、袋詰めをカメに託して釣り銭を受け取った。


「頑張れよ学生」
「先輩も学生でしょ」
「大学生は夏休みエンジョイ」
「店長に先輩シフト増やせるって言っておきますね」
「お願いやめて!」


 笑い話に挨拶で締めて、カメが持っていた袋をかっさらって店を後にした。


「バイトの人と仲良し〜」
「みんな好い人だからな」
「俺もバイトしたい」


 帰り道にため息混じりに言ったカメは、親の意向で高校卒業まではバイト禁止になっている。
 特に過保護ではないが、学生は学生のうちにしか出来ない事があるからという理由らしい。共働きでカメが一人になる時間が多く、その分うちで過ごしているからカメの両親に会うと毎回感謝される。
 毎月小遣いは貰ってるカメは、しかし使い道があまりないからと作ってもらった口座に貯まっていくとか言ってた。

 遊び回っているアホだが、遊びの中で年上と居るとみんな奢ってくれるらしい。前に一度だけ聞いたことがある。
 友達と遊んでもあまり金は使わないようで、俺との遊びはアウトドアなゲーム三昧だしお菓子やジュース程度ならそう大きい額にもならないし、欲しいものも特にないからとカメは言う。

 金遣い荒そうに見られがちだが、そこらへんカメはきっちりしている。
 無駄に好感度上げて来やがる。


 


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