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中編
複雑な心は連鎖する。‐01
 


「───羽田〜、最近春彦くん付き合い悪いんだけど、アンタなんか知ってる?」


 朝っぱら下駄箱で同学年の女子数人に問われたが、知らないけど知っていても教える気がないので「知らね」とだけ返して上履きを足元に落とした。
 女子たち曰く、今まで遊びの誘い程度なら受けていたカメだが2年になってから放課後はまったく捕まらないらしい。
 そういや前まで授業終わると友達や女子の誘いに乗っていたのに、今じゃ脇目も振らずに教室から出てどっか行ってるな。下駄箱に外靴が残ってるから校内に居るのは分かっているが、どこに居るかは分からない。

 聞いてみるか、とぼんやりしながら教室に向かう途中で寝坊したカメに後ろから突っ込まれた。ぶん殴った。






 ───昼休みになって後ろの席にいるカメに今朝聞かれた事を伝えたら、思い当たる節があるのか「あー、」と力ない返事が寄越された。

 どこに行っているのかは個人的に気になっていたから聞いてみると、どうやら理科準備室に居るらしい。
 なんでまたカメと縁の無さそうな所に……と疑問したが、そういや準備室って他のクラスの生徒が放課後に使ってるって話を聞いた事があった。
 部活でも同好会でもなく、たった一人で毎日何かをしている。確か名前は宇佐見裕弥。
 ぼんやりとした外見が浮かんで、どちらかと言えばその宇佐見と一緒に居る友人の方が個人的には接点があるのだがそれは置いといて。

 あまり人を寄せ付けない雰囲気がある宇佐見はしかし密かに人気がある。身長高いし顔は整っているけど笑わないし無愛想なのに優しいとか、でも放課後には一人で何かをしているんだとかなんとか。
 そんな謎多き宇佐見がいる放課後の理科準備室は、影ながら通称『ウサギの巣』と呼ばれている。ネーミングは安直だが不思議と違和感のない存在だ。

 そんな巣の話や宇佐見の事を風の便りに聞いたと告げると、カメは納得したあとに何故か不満か不安か心配か眉を寄せて少し唸った。


 カメは最近、ウサギの巣に入り浸っているらしい。
 二人に接点はなかった。関わっている事が意外に思うほどで、宇佐見は寡黙だしカメは明るく良く喋る正反対の人間だ。

 しかしなんか引っ掛かる。
 最近こいつはどこか楽しそうだ。カメが何を考えて何故宇佐見と関わっているのかを追求してはいけない気がして、コロコロと変わる表情に溜め息を吐いた。
 人の縁なんてどこで繋がるか分からないもんだし、と自分に言い訳をして「お前らは正反対だよな」と紙パック紅茶を吸った。


 この不安はなんだろう。
 別にそれを抱いた所で自分には何の意味もない。何を危惧したってカメに自分の気持ちを言う気はないし、さっさとちゃんと恋愛でもして彼女作って先々結婚だとか何だとかすりゃいい。
 そうすれば潔く諦めて俺も次へ行ける。不毛な恋は投げ捨てるに限るが、それでも未だに残っているのは、特定を作らない恋愛童貞野郎のせいだとカメに責任転嫁をして、また力なく溜めた息を吐き出した。

 こと宇佐見に対して見せるカメの表情の変化と感情の揺れに気付いていながら、俺はそれから目を逸らした。


 


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