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中編
04
 


 元々ゲーム好きではあるけど、ハマってからはなるべく毎晩入っていた。
 学校がある日や朝からバイトの前日は長く出来ないが、金曜は毎週時間を気にする事なく夢中になれる。
 そんなゲーム内で出会った数多のプレイヤーの中で、唯一最も親しい人がいる。


『───お疲れハイネくん』
「お疲れさまですリョウさん」
『今日は大丈夫そう?』
「ばっちりです。リョウさんは?」
『俺も大丈夫。PCが具合悪くならなきゃいける』
「やっぱ調子悪いですか」
『この間修理したんだけどさー、やっぱり買い換えないとダメかも』


 修理中はログインがなく、不在の間は寂しかったのを思い出したが恥ずかしいから言わない。

 ゲームを始めたばかりの頃、四苦八苦していた俺に声を掛けてくれたのがリョウさんだった。
 上級者のリョウさんが素人の俺をパーティに誘ってくれて、他のパーティメンバーも好い人ばかりだがリョウさんは特に落ち着いて優しくノリもまた良かった。
 最も好きだと思ったのは、その声だ。
 特に声フェチではないのだが、初めて聞いた瞬間に耳がやられた。


 銃撃戦がメインのオンラインゲームはボイスチャット機能があって、グループを作ればパーティチャットの設定やその中でもそれ以外でもマンツーマンの会話が出来る。
 野良にしておけば同じように野良にしている人達の声が聞こえて、下らない話から重要な情報も流れてくるから初心のうちは垂れ流しだったけど、最近は殆どリョウさんと個人で会話している。

 近頃イケボだと持て囃される人は多いが、正直俺はリョウさんよりイケボな人(声優さんを除いて)は今のところいないと思っている。
 低音は重いイメージがあったけど、リョウさんの声は低音でありながら透き通る感じがして聞き取りやすいし、たまに高めになる時も小声も、ずっと聞いていたいくらいだ。
 男も落とせる声というのか。
 もちろん女性も例外なく、野良で流していた頃は必ず誰かが声を掛けてくる。でも何故かリョウさんは数多のアプローチに全く靡かない。
 出会い目的じゃないから、とは言っていたから、出会い厨も多いオンラインゲームでその話し方だけでも判断出来るようになったらしい。

 だからまあ、個人でボイチャしようって言ってくれた時は表に出さなかったけどメチャクチャ嬉しかった。
 パーティメンバーともよく話すが、類は友を呼ぶというのか器が大きい人ばかりだ。
 今年から社会人だって言ってたけど、大学でもかなりモテてそうだと思う。

 コンクリートジャングルの荒れた画面から草原に移動し、一仕事終えた感覚に溜め息が出て背凭れに寄り掛かった。


 

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