中編
24時間で発覚。‐01
小山くんの微妙な好意を知ってから早一週間。その間の夕勤は俺も翔君も入ってないからすれ違いだ。
ただ宮田君曰く、小山くんは確実に翔君に恋愛感情を持っているという。
進化させちゃったか、とこの間のlineを見て溜め息をついたのを覚えている。
確かにすれ違いであるけれど、小山くんが翔君を見る目は明らかに片想いの相手を見るそれで、何だか厄介なことになってるなあと思わなくもない。
なんで小山くんに好かれたのか翔君は分かってないみたいだし、この事でマネージャーを煩わせる気もなかった。
ただ仕事に支障が出るなら対策として話さなければならないが、今のところ問題なく小山くんは仕事覚えが早く夕勤メンバーに可愛がられているのはいい。
───が、いかんせん職場がラブホということもあって、勢い余ってやらかすなんて事も正直無くはないと思っている。
それは翔君も分かっていて、だからこそ夕勤に入った時は室内で二人きりにならないようにするらしいけれど。
大袈裟かもしれないが、触発されてしまうことは否めないのである。なんせ職場が職場。過去に勤めていた男女でそういう事件が起きたことがあるのだ。
当事者がどちらも新人で若かったのも理由のひとつではあったけれど、男女だったからとかではなく、どちらかに好意があった事が触発の原因。
同性だから大丈夫だという絶対はない。
マネージャーによって解雇された二人の事が表立って言い伝えのようにならなかったのは、可能性を少しでも減らすためかもしれない。
そういう事はないという前提で仕事に意識を向けて貰うための新人に対する配慮。
関係なく馬鹿なことをする奴もいたけれど、当然ながら滅多にないことだ。
今のところ小山くんにそんな素振りはなく、純粋に片想いしているっぽいけれども。まあ、もし告白されたら正直に言って良いからね、と翔君には伝えてある。
背後で身動きする音がして振り返ると、眠っていた翔君が薄目を開けていた。
週末に仕事の休みはないけれど、それでも互いの気分でこうして俺の部屋に翔君が泊まりに来るのは最近の常になってきている。
シフトがない日はもちろんだが、意外にも翔君は直接的な触れ合いもあるけれど同じ空間で一緒に居ることを好んでいるようだ。
個人的にはとても喜ばしい事実である。
のそりと起き上がった翔君は、けれどベッドに寄り掛かる俺の背にのし掛かってきて、気だるげに唸った。
甘えたな翔君が可愛過ぎて至福である。
起きるの早い、と囁くような声に「なんか目が覚めた」と答えると興味無さげな返事が来て、寝起きからα派大放出だなぁと頬が緩む。
まだ19時前で仕事には余裕があるから、寝てていいよと声を掛ける。
翔君はしばらく沈黙していたけれど、緩慢に俺から離れて「起きる」と言いながら欠伸をしていた。
「……ラーメン食べたい」
「また寝起きからヘビーだな」
トイレに向かう翔君の背中を見ながら笑う。翔君が寝起きでヘビーな食事を求めるのは癖らしい事に最近気付いた。
実際夕食になることも多いけれど、たまに心変わりする。
休みの日は自炊するが、仕事があると行き途中に外食で済ませてしまう。早く起きた時には自炊しようかなあ。
ちなみに仕事で器用な翔君は、料理がからきしダメなのがまた可愛い所である。
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