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中編
05
 


 それからデレの大セールをしているらしい翔くんと戯れながら、宿泊に切り替わり出入りも落ち着いたところで一番上の客室階から片付けていくことにした。
 退室したっつっても予想外に宿泊客が出たため全室の半分は残っている。伴って清掃部屋も少ないから、そのまま部屋作っちゃえー、となったわけだ。
 相手が翔くんだからすぐ終わっちゃうし、休憩で帰った客の滞在時間はほぼすべて五時間以内。楽勝楽勝。


 …とか思ったけど、実際部屋はそんな汚くなかったけど、二番目に清掃に入った部屋のベッドに脱ぎ散らかされたコスプレ衣装(制服)が置いてあって、思わず「えー」と声が漏れてしまった。



「……高い金払って買っといて置いて帰んなよ」
「ここの部屋の客、若くなかった」
「ああー…、えぐいな」
「えぐい」



 退室したときに監視カメラ越しで見た人物は確かに若くなかった。むしろどちらも中年に差し掛かろうとしているように見えた。
 貸し出ししたのは夕勤だろうから、まあその時どう思ったかは大体想像出来るけど何も言われなかったってことは忘れたんだろうな。新人くん居たし。
 ていうかそれを新人くんに持って行かせてたらあいつら鬼畜だと思う。



「とりあえずゴミ」
「風呂行ってくる」
「よろしくー」



 風呂掃除用のバケツを持った翔くんを見送って、さてどう廃棄しようかと考えながらゴミを集める。

 翔くんが風呂、俺が部屋のゴミ集めや備え付けの食器や灰皿洗い、アメニティ補充、ベッドメイクの準備などが主な役割になっている。
 一見して俺のほうが仕事多くない?と思われがちだが、ぶっちゃけそんなことはない。風呂掃除してる間に部屋の掃除が大方終わってしまうのだ。
 それは翔君と役割を交換しても変わらない。
 それに、風呂がクソ汚い時だって結構あるから、部屋の掃除のほうが楽だったりするのだ。
 マネージャーいわく、これは俺と翔君のコンビだから出来ることだと、周りもそうなればいいのにというニュアンスで言っていた。いやニュアンスというか実際に言ってたわ。

 なかなか従業員全員がこういう風にはならない、と疲れたように言っていたマネージャーには、その翌日に大好きらしいハーゲンの限定アイスを買ってあげた。普通に感謝された。

 マネージャーの心労具合を思い出しながらもさくさくと掃除を済ませ、ベッドメイクの準備をしているところで翔君が風呂掃除を終わらせてベッドのところにのそのそとやって来た。
 その動きもかわいい。ほんと癒される。



「床にローションぶちまけやがって」
「え、マジか。ないわー」



 無表情で荒い言葉使いをする翔君が面白い。
 だからいつもより遅かったのか、なんて思いながら時計を見たら、清掃に入ってからまだ十分しか経ってなかった。
 相変わらずの速さだな、と我ながら感心しつつ、翔君とベッドメイクを進めていく。ベッドに関しては二人でやったほうが断然早い。お互い一人でも十分問題ないが、うろちょろしなきゃいけないから、わりと面倒くさい。うまく出来ると楽しいんだけどね。

 ベッドメイクまでさくっと終わらせて、剥いだシーツやらゴミやらを持って翔君がそれを片付けている間に、柄の長いコロコロで床の細かいゴミや髪の毛を取っていく。
 風呂場までかけて最終確認して玄関に向かうと翔君が戻ってきて、風呂掃除のバケツを持って次の部屋に。
 各階にあるリネン室には同じ備品があるから、違う階まで持ち歩く面倒がない。
 次の部屋はきれいかな、どうかな、なんて話しをしながら、さくさくと掃除を済ませていった。


 

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