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中編
出会いは黒歴史から。
 

 長めの茶髪はきれいにセットされて、長身で整った顔。間延びした言葉に、いつも笑顔で優しいけれど、来る者拒まず去る者追わず、な姿勢で特定を作らず幾人もの女と関係をもっている───。

 そんな噂があるから、人は遊び人とかチャラ男とか思ってるけど、ぶっちゃけそんな面倒臭い事はしてない。
 ただ経験人数はそれなりにあるけど、ほとんど年上の社会人なお姉さまで、同年代に手を出した事はほとんどない。
 だって、年上のお姉さまは割り切ってくれる。───気持ちよくセックスをする。それ以上の意味も役割も求めないし、強要も思い込みもない。ただ気晴らしに遊ぶ。それだけ。


 だけどそれを出来ない同年代は、一回ヤったら自分は俺の彼女にでもなったような勘違いをするわ、他の女性に嫉妬するわ、一夜だけって事を伝えて了承したくせに纏わりついて馴れ馴れしくして、やんわり拒絶しても泣く。意味が分からない。
 そんな事があってから、俺は遊びでもセックスするのは割りきれる大人なお姉さまだけ。


 街中で出逢って、連絡先も聞かず、ただホテルやらお姉さまの部屋やらで絡み合う、お互いに同意の上で、性関係としてはすっきりクリアなものだと思う。

 それを他人は悪みたいに言うけれど、性関係に善悪つけたらキリがない。後腐れない一時の関係で納得して拗らせる事もないこっちの方が、浮気や何股やセフレなんかよりもまだマシだと俺は思う。

 この人良いな、とかいう好意の感情はあるけれど、愛はない。
 浮気や何股とかはどっちかに愛があったりするわけで、セフレなんて後々そんな感情が生まれたりする。


 一回だけ、下の名前だけ知っている、けれども知らない他人。終わればそれから見かけても無視。お互いに忘れることもあるわけで。
 随分とさっぱりしていて気楽だから、俺はこの性生活をやめられない。








 そんな俺に、純粋な楽しみが出来たのは、ほんの些細なことが切っ掛けだった。


 高校一年の後半、数回しかしてないけど同年代との遊びをまだ絶ち切ってなくて、そんな遊びを俺が絶ちきる切っ掛けになった頃。
 一回キリだったはずのセックスで勘違いをしたらしい女子が纏わりついてきて、これは面倒なと思った。連絡先を知らないから校内で見つかったら絡んでくるわ、他の女子と話してたら嫉妬するわ、勘弁してくれと距離を置いていたある日。
 放課後ついに見つかって、俺はあからさまに逃げた。
 しかも追ってくる。こわい。
 小走りだったから必死に見えなかっただろうけど、心中冷や汗ものだ。マジで同年代女子怖い。


 追ってくる女子を振り切るように、校内をぐるぐる巡って角を曲がってすぐの教室に飛び込んだ。
 足音が迫ってきて、どうしよう、とぐるりとそこに目を向けたら、そこは理科室だった。
 必死だった俺は、室内の端にある準備室に飛び込んで、そこに人が居るのも気付かずに見えないところに身を潜めてしまったわけで。


 ガラッと準備室のドアが開けられて、ああ、もうやだ。なんて溜め息と共に膝を抱えた時だった。


 

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あきゅろす。
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