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中編
04
 

 清掃中に帰る客もいるから、混んでるときはバラバラになって『はがし』して、上から仕上げていくんだけど。
 今日は暇だから、上から完全清掃で片付けていく。


 上にいて入室してくる客ももちろんいるから、鉢合わせないようにはする。
 終わって部屋から出ようとして、エレベーターから客が降りてくると扉の前で入室するまで待機。ちょっと焦るけど、それはそれで楽しかったりして。



 客と顔を合わせるのは、室内で機材の不具合があったりする、致し方ない時だけ。ルームサービスは手渡しだけど、基本的に顔を合わせないように扉を壁にする。
 まあ、俺らはがっつり顔出すけど、顔は見ない。むしろがっつり見られてんな、って時はある。

 つうかだって、落とすやつ居るんだもん。不安定なグラスとかがあると片手じゃ危ないし、注意を促しても聞いてねぇし。
 だから気にしない。


 因みに翔君は無表情だけどわりと整った顔をしてるから、以前つうか入って半年くらいの時、ものを届けて女が出てくると小声で連絡先を聞かれた事があったらしい。

 スルーして押し付けてきたらしいけど、後からそれを聞いて、すげぇなって返したら翔君は一言「香水くさい」ってしかめ面しただけだった。
 そもそも大概恋人とラブホテル来てるくせに、従業員に連絡先聞くとかどんだけ。マジ引いた。


 そんで翔君に連絡先を聞くとかマジありえないって憤慨。八つ当たりに翔君の髪を弄ってツインテールにした。

 まあ、物事に無関心でもある翔君だから、嫌がる事もなくやらして、朝までそのまま仕事してたけど。
 可愛くて終始笑ってた俺。イライラなんて吹っ飛んだ。そんな翔君が好きだ。



 ちなみにその格好のまま朝までだから、もちろんパートさんに見られるわけで。
 ツインテールに無表情で挨拶されて、それを見たパートさんは見事に固まったなあ。どうしたのって笑顔引きつってた。


 さすがに帰りはほどいて、ひとつ結びになったけど。


 それから俺は、暇になると翔君の髪を弄るようになった。手先は器用な方だから色々な髪型にしてた。不定期だからパートさんはいつもドキドキしながら来るらしい。そんなまさか。


 周りとあまり喋らないから余計びっくりするのは分かるけど、やっぱり首をかしげられる。仲良しなのは翔君が黙って髪を弄られているのを見れば分かるけど、俺が一方的に構ってるように見えるらしい。だよねー。


 翔君は人見知りじゃないけど、無関心に無口に無表情のコンボのせいでそう見られがちだ。俺としては良いんだけどね。
 それでも雰囲気は普通だし、言いたいことは言うし、だから可愛がられてる。仕事出来るしね。

 俺らは同期だし歳も近いからってのもあんのかもしれないけど、俺と翔君のタッグは凄いらしい。
 息があってる、ってこういうことなんすね、と宮田くんに言われたことがある。


 ちなみに夜勤のお母さん的並木さんは、いつもそんな宮田くんを微笑ましく支えています。

 年令もあるけど、並木さんは仕事の時にいつもその日シフトに入ってる夜勤メンバーに必ずコンビニご飯を買ってきてくれるのだ。
 たまに夕勤から入って夜中3時までのシフトが入るから、被ると夜食がついてくる。以前悪いから断ってたんだけど、笑顔でスルーされた。さすがですお母さん。



 そんな夜勤四人は、他の時間帯のスタッフより仲良しでクリーンだ。時間帯別に色々あるからね、うん。こわいこわい。


 

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あきゅろす。
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