中編
4
「俺は、お前をよく見てた」
「……っ、ふ、」
「変なやつだと思いながら、ずっと見てたら、ホントに変なやつだった」
「ん…、は、」
「今のお前も、嫌いじゃないけどな」
笑いながら、楽しそうに、首や鎖骨を舐め、背中を撫でて腰に滑らせ、脇腹をなぞる。
痺れていく感覚。立ち上がっているぺニスが槙野の腹で微かに擦られて、出そうで出ない焦れったさが辛い。
言葉をうまく理解できない。
ただ槙野が一方的に俺に興味を持っていたことだけは分かった。
「腹がぬるぬるする」
「ん、だれの、せい…だ…っ」
「俺」
「……」
なぜか、少し、イラついた。
わかっているなら一々言うなとも思った。
この懐かしい感覚が、槙野と居るとよく現れる。
槙野はまた笑う。
愉快そうに、嫌みなく、本当に楽しそうに、俺を弄ぶ。
「んな顔すんな」
「…?」
「不満そうな顔」
「…お前のせい」
「わかった、真面目にやる」
不満そうな顔をしていたのか、と思ったが、これを真面目にやられてもどうかという呆れにも似た気持ちに掻き消され、楽しそうな槙野を見ているとそれを言うのも憚られる。
べつにいいか、とも思えた。
じっと目を見つめていると、不意に濡れたぺニスに今までとは違った強い刺激が与えられ、咄嗟に息を飲んだ。
「…っ!、ぁッ」
「あっついな」
「ん、…っん、はあ…っ」
無意識に手はまた首の後ろに回り、離れていた距離がなくなり密着する。下から微かな水の音が聞こえて急速に登りつめていく感覚に頭が追いつかない。
ゆるく扱われているのに、敏感になった体はそれを強く感じとる。
一際まとまった感覚に、出る、と思って力を入れた。
「っ、───…は、ふぅ…ッ」
「…早漏」
「お、まえ…っ」
「冗談」
「……」
こいつは俺で遊んでいるのか。
吐き出された白濁が腹にかかっただろうに、それを気にする素振りもなく笑う。槙野と目を合わせたまま、やっと一度射精が終わる。
と、同時、体の内側、奥からさっきより強く熱いうねりが迫ってくるのを感じ、一抹の不安を抱いた。
いつ終わるのか。それまで槙野が飽きずに続けるのか。
ふとした不安が顔に出ていたのか、槙野は俺の体を支えていた手を頬に添えた。
「簡単に気絶すんなよ」
「…っ、…へん、たい、か」
「ハッ、頑固な強がりだな」
「おまえが、…っ壊して、みろ」
「……強がりで煽るとかお前アホだな」
「…は、ぁ?」
煽ってない。
槙野は時々よく分からないことを言うが、否定しないということは変態であるのは認めているのだろうか。
終わりのみえない言い合いを続けても、体は熱を増していく。やはり一度射精しただけではおさまらないらしい。
こんなもの好んで使うヤツの気が知れない。知りたくないが。
「どこ触ってもビクビクしてるな」
「おまえ、いちいちッ、言わなきゃ、気が…っ済まない、のか…?」
「お前の反応が面白いんだよ。よく喋るな」
「……っ」
誰のせいだ、と言ったらどうせまた「俺」だとか言うのだろう、こいつは。
射精してもなお萎えないぺニスを撫でるように触るその手が、また焦れったさを生む。
先から液体が出ていくのが分かる。
「も、つらい…っ、あらた、」
「あー…、俺もつらい」
「なんでだ…っ」
「お前の全部。たまんねえ」
「は、───…んッ」
何を言っているんだ、と思った瞬間、唇を食われた。
文字通り食らうように、目を合わせたまま、柔らかいそれに声を飲み込まれ、食べられ、なめとられる。
腰をおさえられながら、舌が中に入ってくる感覚を拾っては、口内を犯されるように吸われ、なぞられ、甘噛みされる。
その度に腰に電気が走る。
ビリビリと、チリチリと、飲み込まれそうな感覚。それだけで達しそうになる。
「ん、ふ…ん、ぁ…っ」
「…ん、逃げ、んな」
「んん、ふぅ…っ、ん」
キスだけなのに気持ち良過ぎるからいけないのだ。こいつは俺が敏感になっているのを忘れているわけではあるまい。
分かっていてアホみたいに刺激してくる。タチが悪い。
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