02
「───消してやろうか、それ」
「……は?」
放課後のがらんとした教室の机にだらしなく座り、真ん中の列の真ん中の席にいるヤツを見下ろして吐き出した言葉。
さすがに意味がわからなかったのか、示された反応にさらに沸き上がる欲望。
「消してやるよ、その寂しさ」
「寂しくありません。」
そう言って鞄を手に教室から出ようとするヤツに、また声をかけた。
次で同じ反応ならやめようと決めていたし、しつこいのは自分自身嫌いだったから。
「んじゃ言い方変えるわ。…満たしてやるよ、本能」
「…ウソつき」
正直、予想外の答えだった。
自分で言ってちょっと引いたのに、相手は立ち止まって感情を露にぶつかってきたから。
思わず言葉が詰まったが、机から降りて距離を縮めていく。間近に来て改めて見るその目は、やっぱり寂しそうだった。
「二時間、オレにちょうだい」
「二時間?」
こんな会話を出来ると思ってなかったから、実際どうしようか考えながらの発言で色々と危うい状態だ。
「夜九時に部屋に迎えいく、」
「は、あ…?」
「ちゃんと出ろよ」
「ちょ、」
じゃ、と手を上げて一方的に話をつけた。意外にもオレは夜を楽しみにしていることに気づいた。
夜九時ぴったりに部屋を訪ねれば、ラフな服を纏って出てきた。
「じゃ、オレの部屋行くぞ」
「…ぇ、」
「いーから」
華奢な手を引いて、静かな廊下を進み自分の部屋まで戻る。
自分がやろうとしていることに迷いはなかった。ただどんな反応をするのか知りたかっただけで、嫌われようがどうなろうがそんなことは気にならなくて。
「おじゃまします」
「どーぞ」
部屋に戻ってカギを閉めて、薄暗い室内を訝しげに見回すそいつを引っ張って、やわらかいベッドに座らせた。
「まあ、拒絶しなかったってことは、お前のそれを満たす方法を知りたいってことだよな」
間近にしゃがみこんで見上げたその目は、少しだけ動揺していた。
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