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タイムリミット/続
 

 ほんの少しの好奇心と暇潰しという気持ちから、手を差し出した。
 なんの反応もしないヤツは、自分自身では気付かないくらい密かにその目を寂しそうに揺らしている事をオレは知っている。











 

 パタン、とドアが閉まる音は、なんの感情も滲ませないくらい普通だった。
 窓から流れ込む少し冷たい空気と入れ替わるように、外へ流れているであろう情事の証拠。
 コップ一杯の水を飲み干して、やわらかいベッドに仰向けに倒れ込んだ。
 部屋には贅沢にもベッドがふたつある。
 だからオレは、ひとつをセックス専用にした。連れ込む相手は、二時間設定の見えないタイマーを背負ったアイツだけ。

 ただの興味本意だった。好奇心だ。








「───うわ、飽きないなあいつらも」
「……そうだな」


 同じクラスに、絶え間ない嫌がらせや陰口、陰湿なイジメを受け続ける人間がいた。
 ただ、本人は至って無反応で、何をされても反応がない。不登校にもならなければ、言い返すことも泣くこともない。
 毎日同じ行動をしている。声も聞いたことがない。
 頭は頗る良いらしかった。確かに見た目からのイメージは真面目で、真面目すぎてつまらないほど。


 だけど、オレは見てしまったから。


「なあ、たまには俺の部屋でゲームしようぜ!」
「んー、ほとんどクリアしちまったしな」
「お前マジで実は隠れゲーマーだろ」
「ちげーよ、…ッ!」


 一瞬だった。体に衝撃が伝わり、体が勝手に動く。よそ見をしていたのは自分だったから、無駄に良い反射神経に感謝しながらぶつかってしまった相手に触れた。


「……わり、だいじょ、」
「す、みません…」


 間近に捉えたその目が、なぜか酷く揺れているように見えた。動揺や恐怖とかじゃなくて、まるで寂しさをそのまま表したような。


「……あの、」
「あ、悪かったな」


 ガン見したうえに掴んだままだった肩を離して再び謝罪すると、小さく大丈夫だと返ってきてそのまま行ってしまった。
 小柄でもない平均的な身長の細身な体で歩いていく背中を、ただ見ていた。


「くっらー」
「……」


 近くにいたダチの言葉に否定はない。だけどオレは見てしまった。
 知ってしまったのだ。
 あの冷めたオーラと人間の中にある、大きな寂しさを。

 そして抱いてしまった。
 あの寂しさを全面に引き出して、その本能を目の当たりにしてみたいという欲望を。





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あきゅろす。
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