02
籠った空気が息苦しさを増して、それが余計に与えられる快楽を助長する。
深く、深く、確かめるように体重をかけてめり込んでくるその異物に、全身から痺れていって脳みそが麻痺するような錯覚。
「ァ…っ、んんんッ」
「俺が、しつこい方で良かったなァ」
「はっ、はぁ…」
長いようで短い二時間というタイマーは、いつから用意されていたのか俺は知らない。
ひとの体の中を執拗にかき回して絶えず強烈な刺激を発生させている、この人間の中身を俺は知らないのだ。
外見だけを知っているだけで普段の生活も人間関係も、この二時間以外の性格も、なにも知らない。お互いに。
だからこの関係は誰も知らない。
始まりも終わりも誰も知らずに過ぎて、思い出にすらならずに消える。
「あっ、ふ、んんッ」
「イくついでに、逝きそうだな…っ」
「や、あっ、も…ッ、」
頭の中を真っ白にして一部の記憶をぶっ飛ばして、本当にこのまま逝きそうなくらいの衝撃をぶつけられて果てる。
毎週金曜日の夜九時に始まって十一時に終わる関係。
果てて、窓を全開に冷たい空気を吸い込んで、汗と白濁を洗い流して、会話もせずに部屋を出る。そして死んだように眠るんだ。
お互いの会話は、会話にならない言葉のぶつけ合いでセックスしてるときだけ発生し終われば声はない。
息を整える間だけの余韻を感じ、お湯と共に流し落とす。
この行為に愛はない。
イメージを、印象を植え付ける事は容易いと思っている。
自分はこういう人間だと他人に主張するほど考えたことはないから、他人の抱いている自分への印象を拭うことも書き換える事もしない。
一般な真面目人間になろうと思ったわけでもなければ、不良になろうと思ったわけでもない。でも人は人を区別する。そうしないと認識出来ないのだろう。
自分もそうであるように。
でも、この時間だけは本能だけを主張させていたい。
これは「愛」にはならない。
そうなった瞬間に、この関係は崩壊する。
それを惜しいと思ってしまえば。
END
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