03
つらい。気持ちいい。つらい。イきたい。気持ちいい。
延々そればかりが回る。
ひたすら続く快感に思考が麻痺する。
「冬真、ちゃんと、言って」
若干乱れ気味な息と声が、降りかかってきた。
言ってってなんだ、なにを言うんだ、と快楽のうねりの中でやっとまともな事が浮かぶ。
「───好きだよ、冬真」
それと同時、耳の後ろからリップ音が聞こえた。
もう、なんなんだ。
「はっ、はぁ…っ、ん…」
自分の口が魚みたいにパクパクと開閉する。その度に堪えていた声が漏れて、息を飲み込んだ。
息を吐き出し、口を開く。
「───ひ、びき、」
「…っ、」
息を飲む、気配。
ぐっと俺のモノを掴む手に力が入り、高い声を吐き出した。
「ふ、ぅ…ん、…っ響、ひび、き…っ」
「もー…、その声だけでイけそー…」
思ったよりも甘ったるい自分の声に嫌になりながらヤツの名前を言うと、ヤツは荒くなる熱のこもった息を吐き出した。
途端、モノから手が離れて体ごと後ろを向かされた。
力がうまく入らなくて窓に寄りかかってしまったが、腰に回る腕に引き寄せられた。
ヤツの肩越しに見えた光景に、ここが空き教室だと思い出す。
「もっと呼んで」
抱き締められ、囁かれ、無意識に口からヤツの名前を紡ぐ。
なんなんだ、さっきから。
今日はおかしい。いつもと違う。
いつもなら、いつもならもっと変態なのに、なんで今日はこんなに、こんなに。
「好き過ぎて吐きそー…」
「、んぅ…っ」
顔を上げられ、柔らかいそれが唇に触れる。
舐めて、吸って、噛みついて、ぬるりと舌が入り込んでくる。
唾液を絡ませて吸い上げられて撫でられて、また噛まれて。
口内を犯される、とはこういうことかと、変に冷静になった。
甘すぎて、真っ白になる。
「冬真、とうま、」
「ん、ふ…、あ…っ」
唇が離れる度に名前を呼ばれる。
視界がぼやけて、生理的な涙が滲む。
「赤面に涙目に荒い息遣いと色気満載過ぎて俺の理性がゲシュタルト崩壊しそう」
「…意味わからん」
やっぱこいつは安定の変態だった。
理性がゲシュタルト崩壊て。
簡単な話、分からなくなるってことだろうが、理性が理解できなくなったらこいつはもう変態を超越するだろうよ。
「とうま、」
小綺麗な顔が、分かりやすい愛情がこもった目を細めて笑う。
不覚にもドキッとした俺滅べ。
そのまままたキスをされ、啄むように繰り返されるソレに糖度が上がったような気がした。
「、ん…ふ、ッ…、んんっ!」
突然の下半身への刺激に、細まっていた視界がバッと開ける。
目の前には、妖艶さを浮かべる目。
イきたくてもイけなかったソレがまた熱を持ち、込み上げる快感に体が震える。
「んっ、んっ、あ…ッ、ふぅ…っ」
深くなる口付け。ずくずくする腰。立っているのが辛くなる。
───不意に、後ろに手が回った。
尻を撫でる手にぞくりとする。
「あっ、ま…、ひ、びき…っ」
「やだ。むり」
先走りを絡めた指が、窄まりを撫でる。
ぬるぬると滑る指は徐々にそこを解すように動き始めた。
前は未だにもどかしい強さで刺激されていて、脳が錯覚を起こす。
撫で解されるそれすらも快感に変えてしまう。
「や、…ん、はっ、あっ」
「冬真、かわいい」
瞼に、眉間に、目尻に、口端に、柔らかい唇がキスを落としていく。
ぬるり、と指が中に入ってくる感覚に、思わずヤツのシャツを握りしめた。
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