13
ゆっくりとなめらかに停止した車の窓から見えたのは、中学から見る事がなくなった学校。
派手な飾りが施された校舎、校門前に文化祭の手作り看板。私服の一般人はほとんどが若者だけど、数人でグループになりながら校庭を目指してる。
校庭になんかあんのか?
屋台?廊下とかかと思ったんだけど。
「車停めてくっから、先に行ってろよ」
「校門前で待ってるよ」
行こ、と千世と手を繋いで車の外に出たら近くにいた女子が騒ぎ出した。
他校の生徒かな。カッコイイからね、千世。
人の多さと騒がしさで無表情だけど。
「うざい」
「まあまあ、そんなもんだ」
ぎゅう、と繋いだ手に力が加わる。
周囲で千世を見てる人間は、当然ながら俺は視界に入ってないとみた。
まあ、どこにでもいるような一般人だし。数人に鋭い視線向けられてるけどね。
やーね、嫉妬?
残念でした。千世の視界には俺しかいないから。
間違えた。視界じゃなくて世界だった。
「屋台何があるんだろーなあ」
「やきそば?」
「たぶんあるよー」
校門前、邪魔にならないとこで千鳥を待ちながら話してたら、小柄で小動物みたいな制服男子が近付いてきた。
小走りで。
なんか持ってる。
「…あ、あの!ここの文化祭に来てくれたんですか!?」
「……」
千世を見てるから千世に話かけてんだろうけど、生憎うちの子の視線は俺の手です。
にぎにぎしてくる。ちょー可愛い。
「……あの、よかったら僕のいるクラスの喫茶店に、」
「うるさい」
たった一言、千世は顔も目すらも向けずに言った。
文字にしたら可愛いけど、無表情だから。素敵過ぎるよお前。
見てよ、生徒泣きそうだよ。早っ。
はやく千鳥来ないかなあ。
騒がしくなりそうだけど。
うるうるした目のまま悲しそうな顔して走り去った乙女的男子生徒を目で追いながら、千鳥の車が走ってった方がちょっとざわめきがうるさくなったのに気付いた。
逆ナンされんの早くね?
大人のオネエサンも来るんだね。四人に囲まれてるよ。びっくり。
でも千鳥は超無表情。
興味ありませんってか。
むしろ眼中にないってか。
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